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子どもを取り囲むヤングケアラー問題 支援と私たちができることについて

「ヤングケアラー」とは、家族の介護や世話をする18歳未満の子どもを指す言葉。近年に入って、その言葉が世間的に認知されるようになった一方、正確な実態把握や具体的な解決策など、多くの課題が残っています。
 本記事ではその実態や問題性を紹介するとともに、子どもたちのライフチャンスを守るために、社会には何が求められているのかを解説していきます。

ヤングケアラーは1クラスに1~2人いる、身近な存在

 2012年4月発表の政府調査によると、日本には約17万7,600人ものヤングケアラーがいるとされています。しかもこの数字は、14歳以下や私立校に通う子どもをカウントしていないもの。そこに現在の増加傾向を加味すれば、実際のヤングケアラーはもっと多いと考えられるため、感覚としては1クラスに1、2人いるのが実態に近いとみられています。『日本財団 ヤングケアラーと家族を支えるプログラム』では、ヤングケアラーは17人に1人の割合で存在しているといいます。
 また、その形態もさまざまです。一人親家庭などの家庭形態が原因となる場合、両親と暮らしていてもコロナ禍による失業や災害の影響で困窮している場合など。いずれにせよ、十代以下の子どもが祖父母や幼い兄弟、障がい児童などのケアを担い、家庭を助けねば立ち行かない現実があるのです。

勉強や部活等、子どものライフチャンスが奪われていく

 ヤングケアラー問題をSDGsの目標に当てはめた場合、3番の「すべての人に健康と福祉を」、4番の「質の高い教育をみんなに」が該当する目標となるでしょう。というのも、ヤングケアラー問題で特に大きいのが、学業と介護を両立する難しさ。それによって、人生のライフチャンスが喪失されかねない点です。
 先述の日本財団のHPによると、ヤングケアラーと思われる中高生の内、約1~2割が平均7時間以上を家族の世話に費やしていると言います。また「世話をしているためにやりたいけれど、できていないこと」として「宿題をする時間や勉強する時間が取れない」「睡眠が十分に取れない」「友人と遊ぶことができない」「自分に時間が取れない」と回答した割合が高くなっていました。
 このように家族の世話や介護に時間を取られて、部活や恋愛、友人との交流ができないばかりか、進路変更を考えたり、大学進学をあきらめたりする子どもは少なくありません。
しかも厄介なのは、こうした問題から子どもたちを救い出そうとしても、その手が当人に届きにくい点にあります。
 そこには多くの事情がありますが、特徴的な要素としてあげられるのが、ヤングケアラーの多くは自身がヤングケアラーだという自覚が薄いこと。自身が特別な状況にあると考えてもいないので、SOSダイヤルなどにも気が付きにくいのです。
 また、自覚がある子どもでも、親から口外しないよう釘を刺されたり、親を庇って当人が口を閉ざしたりする場合もあります。家庭の中という閉鎖空間での出来事ゆえ、外部に可視化されにくい難点を抱えているのです。

 子どもにとって、かけがえのない時間となる夏休みも、ヤングケアラーの場合は喜ばしいことばかりではありません。学校という外の世界がなくなり、逃げ場がなくなること。家庭によっては給食が無いことで食事に苦慮する場合もあります。そうした状況に備えて、地域食堂などの支援機関も増えているものの、前述のように必ずしもその存在・情報が届いていると言い切れないのが現状です。

これからのヤングケアラーへの支援と、私たちができることについて

 現在、ヤングケアラーを救うための取り組みが急ピッチで進んでいます。各支援機関のほか、ヤングケアラーについての授業を行ったうえで、生徒一人ひとりに聞き取りをする自治体も増加傾向にあります。困窮する学生向けの学費減免や、訪問型の家事支援制度の充実といった具体策も講じられ、今年4月には子ども政策の中心となる「こども家庭庁」が新設されました。
 それでも、ヤングケアラー問題の解決には、周囲の大人の目配りが必要です。そのためにも、大人が担うべき責任を代わりに背負っている子どもが身近にいる事実を、まずは多くの人が知ることが欠かせません。現状、”他人で大人”な私たちにできることは非常に少ないでしょう。それでも、さりげなく、しかし想像力を働かせながら子供に接していくことが救いに繋がる気付きを生むのではないかと思います。

Sus&Us編集部

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