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ブルーカーボンとグリーンカーボンとは?

今年も酷暑の夏に突入し、世界中の国々で最高気温を更新したというニュースが聞こえてきます。中国北西部では52.2度を超え、ヨーロッパ方面ではイタリアで48.8度を更新する勢いだと言います。世界的に環境問題への意識が高まり、特に、地球温暖化や降雨量・降雪量の上昇などの気候変動への関心が高まる中で、多くの国家や企業、団体が、気候変動の原因の一つとされている温室効果ガスの対策に力を入れ、カーボンニュートラルの実現を目指した取り組みが行われています。その中でも注目されている、グリーンカーボンとブルーカーボンについて解説していきます。

▼グリーンカーボン

グリーンカーボンとは、陸上の植物が二酸化炭素を吸収し、光合成によって有機炭素化合物を生成し、植物の内に蓄積されている炭素のことを言います。グリーンカーボンを生成する植物たちをグリーンカーボン生態系と呼び、代表的な例に森林があります。

グリーンカーボン生態系には多くの役割があります。例をいくつかあげると、光合成で生成された酸素の排出、生態系の維持、貯水能力などがあげられます。これらは、陸上生物が生きていくうえで必要なモノばかりです。陸上の植物を大切にすることは、私たちに多くの恵みをもたらしてくれると言えるでしょう。

グリーンカーボンの課題としては、陸上の限られた面積でしか植林を行えないため、増やすことが難しいという点。炭素の貯留期間が数十年~数百年と、ブルーカーボンと比較すると短い点になります。

▼ブルーカーボン

グリーンカーボンに対してブルーカーボンとは、マングローブや塩性湿地、海藻藻場といった生態系に生息している海洋生物が二酸化炭素を取り込み、光合成をすることで有機炭素化合物として生成され、海底に固定化・貯留されている炭素を指します。

海洋生物による二酸化炭素の吸収率はグリーンカーボン生態系よりも非常に高いとされ、カーボンニュートラル実現のために大きな期待が寄せられているのです。また、炭素の貯留期間も数千年以上という長期間にわたり可能となっている点も、ブルーカーボンが注目されているポイントと言えるでしょう。さらに、IPCCの「海洋・雪氷圏特別報告書」によると、世界全体のブルーカーボンの気候変動緩和ポテンシャルは、世界全体の温室効果ガス排出量の0.5%を相殺する程度と評価されています。

また、海洋ごみ問題の中でも特に大きな問題となっているマイクロプラスチックの吸着能力も期待されています。このようにメリットが多いブルーカーボンですが、課題点はというと、様々な環境要因があるため、海底の深層に存在しているブルーカーボンの評価が難しいという点です。

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まとめ

グリーンカーボンとブルーカーボンという、陸と海の生態系による温室効果ガスの吸収・固定化能力について見ていきました。

今回解説した内容は、SDGs7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、SDGs14「海の豊かさを守ろう」、SDGs15「陸の豊かさも守ろう」とも関わりが深く、持続可能な社会のためにも大切なことです。

特に注目されているブルーカーボンにおいては、各国がブルーカーボン算定に向けた取り組みを本格化していくと想定されており、マングローブ、湿地、干潟、海草藻場の生態系を活用した温室効果ガス対策が期待されます。


参照元
ブルーカーボンの評価手法及び効率的藻場形成・拡大技術の開発 経済産業省
ブルーカーボン ―沿岸生態系の炭素隔離機能 港湾空港技術研究所

Sus&Us編集部

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