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SDGsから読み解く防災の基礎知識~レジリエンスを高める~

防災

気候変動に伴い、災害の大規模化が進む昨今。

本記事では、SDGsと防災の関係性、防災の基本的な考え方となる「仙台防災枠組2015-2030」、日本における災害状況、企業や個人ができる防災対策を紹介します。

災害大国とも言われる日本で、どのように災害と関わっていくべきか考えるきっかけになれば幸いです。

SDGsと防災の関係性は?

SDGs(持続可能な開発目標)では防災に関わる目標・ターゲットが設定されています。ゴール1、2、11、13で災害に言及しており、「レジリエンス」をキーワードに対策を行う旨が記載されています。

レジリエンスとは、「回復力」や「弾力性」などを意味する言葉で、防災の観点からは、災害が起きても社会機能を維持・回復しつつ災害の影響を最小限に抑えるという意味で使われます。

レジリエンスを高めるためには被害を未然に防ぐための予防的な対応や、予防対応の範囲を超える災害に対する臨機応変な対応、大規模災害に対する社会システムの変革も含めた抜本的な対応が求められ、現在の防災の考え方の基本となっています。

ゴール1「貧困をなくそう」
2030年までに、貧困層や社会的立場が弱い人に対し、自然災害やその他の経済、社会、環境的ショックや災害から受ける被害を軽減する。

ゴール2「飢餓をゼロに」
2030年までに、生産性・生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や干ばつ、洪水などの災害に対する適応能力を向上させ、土壌の質を改善させるような、回復力のある「強靭(レジリエント)」な農業を実践する。

ゴール11「住み続けられるまちづくりを」
2030年までに、貧困層や社会的立場が弱い人々の保護を考慮しつつ、水害などの災害による死者や被災者数、経済損失を大幅に減らす。

2020年までに、誰も取り残さず、資源を効率的に利用し、気候変動への対応力や災害に対する回復力のある「強靱(レジリエント)な地域」を大幅に増やす。そして、国際的な防災の枠組(仙台防災枠組2015-2030)に沿って、あらゆるレベルで総合的な災害リスク管理を進める。

ゴール13「気候変動に具体的な対策を」
すべての国で、気候関連の災害や自然災害に対して、回復力のある「強靭さ(レジリエンス)」と適応力を強化する。

具体的な目標や対策は、ゴール11で触れられている国際的な防災の枠組である「仙台防災枠組2015-2030」に掲げられています。

仙台防災枠組2015-2030とは

「仙台防災枠組2015-2030」は2015年、仙台で開催された第3回国連防災世界会議で、2030年までに世界の国々が防災・減災に取り組んでいくための枠組みとして採択されました。

同枠組みの特徴としては下記の3点が上げられます。

1.災害による死亡者の減少など、地球規模の目標を初めて設定。
2.防災の主流化、事前の防災投資、復興過程における「より良い復興(Build Back Better)」などの新しい考え方を提示。
3.防災・減災での女性や子ども、企業など多様なステークホルダーの役割を強調。

仙台市「『仙台防災枠組』推進に向けた取り組み」


具体的な災害対策の方向性としては、4つの「優先すべき行動」に示されています。

優先すべき4つのこと(優先行動)
1.災害のリスクを理解し共有すること
2.災害リスク管理を強化すること
3.防災への投資を進め、レジリエンスを高めること
4.災害に十分に備え、復興時には 「ビルド・バック・ベター」を実現すること

「市民のための『仙台防災枠組2015-2030』」


レジリエンスを高めるための一つの方策として掲げられているのが、「グリーンインフラ」です。これは自然が持つ力、生態系の機能を活用して災害に強いまちづくりをしようというもので、樹林による地盤強化や貯水の機能を活用した土砂災害・洪水対策、サンゴ礁による高波対策などが挙げられます。

「ビルド・バック・ベター」とは、より良い復興を意味します。災害からの復興に当たり、災害発生以前からあった問題も一緒に解決していくことを目指す考え方です。被害を受けた施設や道路、公共交通などをあらゆる人が使いやすいように配慮(ユニバーサルデザイン)した形で復旧するというもので、サステナブルな社会を目指す上で重要な概念だといえます。ユニバーサルデザインについては「SDGs実現の切り札?ユニバーサルデザインについて解説」の記事もご参考ください。

日本における災害状況を知る

日本における災害状況についても確認しておきましょう。

日本では、地震、暴風、豪雨、洪水、土砂災害などが毎年のように発生しています。とりわけ、近年は気温の上昇など気候変動の影響が大きく、災害の大規模化・頻発化が進んでいます。
具体的には、世界の平均気温はこの100年で0.74℃上昇していますが、日本はさらに上昇幅が大きく1.30℃上昇しており、大雨や短時間の強雨の増加や、海面水温の上昇による台風勢力拡大につながっていると考えられます。

日本における災害の中でも、特に甚大な被害をもたらしてきたのは地震です。現在(2023年)から100年前、1923年に関東大震災が発生しましたが、その後も1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災と大規模な地震が発生しています。

関東大震災(1923年9月1日)
<規模>マグニチュード7.9
<直接死・行方不明>約10万5千人(うち焼死 約9割)
<経済被害>約55億円(GDP比 約37%)

阪神・淡路大震災(1995年1月17日)
<規模>マグニチュード7.3
<直接死・行方不明>約5,500人(うち窒息・圧死約7割)
<災害関連死>約900人
<経済被害>約9兆6千億円(GDP比 約2%)

東日本大震災(2011年3月11日)
<規模>モーメントマグニチュード9.0
<直接死・行方不明>約1万8千人(うち溺死約9割)
<災害関連死>約3,800人
<経済被害>約16兆9千億円(GDP比 約3%)

今後も大規模地震の発生は予想されており、南海トラフ地震(マグニチュード8~9級)の30年以内の発生確率は70%~80%とされています(2023年時点の予測)。

参考:令和5年版防災白書

企業ができる防災のポイント

企業が災害に備えることは、①従業員や顧客の命、自社の設備や財産を守ること、②事業活動を早期に再開させること─の2つの意味があります。
もし地域のハザードマップを見たことがない場合は、一度目を通しておくことをおすすめします。

①の観点からは、下記のような対策が取られます。
・地域や業種の特性を踏まえた災害リスクの把握
・避難経路の確認
・災害時の行動マニュアルの作成
・帰宅困難者に対する飲料水や非常食などの備蓄
・初期消火訓練、AEDによる救護訓練

②では、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し、事業復旧の手順等を定め、必要な設備・体制を整えておくことが大切です。例えば、下記のような対策が求められます。
・被災時に優先して残す事業の選定
・非常用電源の整備
・安否確認を行う手段の確保
・災害対策チームの設置

個人ができる防災のポイント

個人が災害に備える上では、前述した企業の防災に関する①の対策がほぼ同様に当てはまりますので、参考に取り組んでみてください。

その他、普段から行えることとして、下記が挙げられます。
・家具が転倒しないように固定
・家具が倒れても出入口を塞がない場所に配置
・懐中電灯やスリッパを常備
・飲料水(1人1日3リットルを3日分)を用意
・非常食(ご飯やビスケット、板チョコ、乾パンなどを3日分)を用意

併せて防災対策に関する情報収集を行っておくことも大切です。信頼できる情報として、まずは官公庁や自治体のサイトが役立ちます。例えば「災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~」(首相官邸)などを参考にして準備をするといいでしょう。

また、近年は小中学校での防災教育の充実が図られており、「防災教育ポータル」(国土交通省)では最新の取組内容や授業で使用できる教材例・防災教育の事例などが紹介されています。現在の防災に関する教育の現状や子どもが何を学んでいるかを把握できるのはもちろん、防災に関する知識の確認にも利用できます。

近年は個人向けの雨水貯水タンク(ミニダム)やソーラーパネルによるポータブル電源などの防災グッズも販売されています。必要に応じて用意しましょう。

まとめ

防災はSDGsにおける重要事項であり、「レジリエンス」という考え方をベースに対策が進められています。

気候変動の影響もあり、災害リスクが高まっている現在、企業や個人としてできることに取り組みつつ、災害に強いまちづくり、社会にするにはどうすればいいか考え、行動していくことが大切です。

Sus&Us編集部

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