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SDGsと交通安全-事故死者数ゼロを目指して-

SDGsのゴール3「すべての人に健康と福祉を」では、「2020年までに世界の交通事故による死傷者を半減させる」との目標を掲げています。

既に2020年は過ぎていますが、世界の交通事故死者数は2010年が約120万人で、2022年が約130万人でしたから、目標達成には程遠いのが現状です。(WHO「Road traffic injuries」より)

交通事故に対し、私たちに何ができるでしょうか。本記事では主に日本の状況について紹介していきます。

日本における交通事故の現状

2022年に日本で発生した交通事故は30万839件で、交通事故による死者数は2610人でした。

2610人のうち955人が歩行者で、横断歩道以外の場所を渡ったり、信号無視をしたりする人が半分程度いました。2022年10月に交通事故が原因で亡くなったザ・ドリフターズの仲本工事さんも、車と接触したのは信号機のない交差点を横断中のことでした。

また、自動車乗車中の死者が870人、バイク乗車中が435人、自転車乗車中が339人でした。電動キックボードによる死者も統計上初めて発生しています。

交通事故死者数が最も多かったのは1970年で、なんと1万6765人が交通事故で亡くなっています。それを考えると大幅に死者数は減っていますが、事故一つ一つの重みが減ったわけではありません。

【参考】
警察庁「交通事故分析資料」

筆者は以前、交通事故で夫を亡くされた方のお話を聞く機会がありましたが、当事者の衝撃と悲しみは筆舌に尽くしがたいほど大きく、事故死者数「1」が持つ意味の重さを感じさせられました。

各都道府県警察のHP等に交通事故の被害者遺族の手記が掲載されていますので、一度目を通していただければと思います。

千葉県警察「交通事故御遺族からのメッセージ」
神奈川県警察「もう一度会いたい・交通事故被害者遺族の手記」

交通事故を減らすために

当然ですが、交通事故を減らすには、交通ルールを守ることが大前提です。信号機を無視しない、飲酒運転をしない、ながらスマホをしない、シートベルトを着用する─等々。大人になってから交通ルールを学ぶ機会は運転免許取得時等に限られるため、曖昧にしたままのルールもあるかもしれません。下記サイト等で確認しておくと安心です。

警視庁公認交通安全情報サイト「TOKYO SAFETY ACTION」

2023年4月からは自転車のヘルメット着用が努力義務化されます。「努力義務だからいいか」と考える人も多いと思われますが、ヘルメットを着用することで致死率が下がることは確かですから、ぜひ着用が当たり前の社会にしていきましょう。

また、反射材を身に着けることで防げる事故もあります。反射材は50m先のドライバーにも見えるため、キーホルダーを着けるだけでも事故防止につながります。

交通事故のない未来の社会へ

現在、自動車は100年に1度の大変革期を迎えていると言われています。脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現に向けてエネルギーが見直され、電気自動車(EV)の普及が進んでいます。

事故防止の観点からは、自動運転技術の進展が注目されます。現在日本では「自動運転レベル3」が解禁されており、高速道路の渋滞時など限定された場所で、緊急時はドライバーが運転するという条件付きで自動運転が可能となっています。より高度な自動運転についても実証実験が進められています。

完全な自動化はまだ先になりそうですが、事故の原因のほとんどがヒューマンエラーに起因するため、自動運転技術が確立・普及すれば、交通事故の減少にもつながると期待されます。

社会のあり方も変わりつつあります。「車に頼らなくても生活ができる街づくり」への動きが活発化しており、ヨーロッパでは毎年9月にカーフリーデーという、「車に乗らない日」を設定している国があります。

イベントだけではなく、都市計画・まちづくりの見直しも行われており、例えばスペイン・バルセロナでは特定のエリアで車の通行を制限したり、交差点の真ん中にベンチや植物を置いて広場にしたりする計画が実際に進んでいます(スーパーブロックプロジェクト)。

皆さんが思い描く交通事故がゼロの社会は、どんな姿をしているでしょうか。
理想の社会を想像してみることで、見えてくるものがあるかもしれません。

Sus&Us編集部

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