京都議定書とパリ協定について
近年、異常な暑さと寒さにより、各家庭や事業所でエアコンがフル稼働しています。
しかしエアコンを使うことで電気の使用量が増大し、その電気を作るために石炭や石油といった化石燃料を燃やすことで、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が増大しました。
その結果、余分な熱が宇宙に放出されずに地球上に籠り、現在の地球温暖化へとつながります。
また自家用車を利用することでガソリンを燃焼することから、車から多くの排気ガスが出て、そのことも大気中のCO2濃度を増大させることになりました。
CO2を含む温室効果ガスの排出量は、2005年発効の京都議定書や、2016年発効のパリ協定によって、世界的に減少させる方向で各国が協調する流れになっています。
ところで、ここに出てくる京都議定書とパリ協定の違いとは、いったい何なのでしょうか?
本記事では京都議定書とパリ協定の違いについて言及しつつ、その後の世界各国における温室効果ガス排出量削減の動きなどについて紹介していきます。
地球温暖化についての流れ
本記事の前段階として、地球温暖化に至る経緯について説明しましょう。
20世紀中頃から、公害による環境汚染が問題になりはじめ、住民の意識の高まりとともに行政側でも環境問題への研究が深まり、併せて地球の気候についても研究が進められるようになりました。
そもそも石炭の大量消費などによって大気中のCO2濃度が増え、それに合わせて気温が5~6度上昇するといった研究も発表されていましたが、1980年代に入るとその傾向が顕著となります。
1985年に開催された地球温暖化に関する初の世界的学術会議となったフィラッハ会議では、21世紀半ばには人類が経験したほどのない規模で気温が上昇するとの見解が示されました。
1988年にはアメリカ航空宇宙局(NASA)研究員ジェームズ・ハンセンが議会の公聴会で「最近の異常気象、特に暑い気象が地球温暖化と関係していることは99%の確率で正しい」と発言します。
この発言により、地球温暖化が猛暑の原因という説が世界中に広まります。
また学術機関「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が1990年に公表した第一次報告書では、21世紀末までに地球の平均気温が約3℃、海面が約65cm上昇すると予測しました。
これらのことからもわかるように、地球温暖化の流れはなお一層進んでいくこととなります。
そこで1992年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された「環境と開発に関する国際連合会議」(地球サミット)で地球温暖化防止条約とも呼ばれる気候変動枠組条約が採択されました。
この条約で温暖化対策の枠組みが示されたものの、温暖化は未知な点が多いことから、何年までにどうしなければならないかといった具体的な目標が示されておらず、概念的な内容に終始します。
そこで具体的なルールを定める必要性が指摘されて、京都議定書とパリ協定が制定されたのです。
京都議定書とパリ協定の違い
京都議定書:対象国が一部の国だけで、拘束力が強くて不公平と批判が強い
正式には「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」と言い、1997年12月に京都市で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で採択されて、2005年に発効されたものです。
内容としては、2008年から2012年の間に、温室効果ガスの排出を1990年比で約5%以上削減し、その後は2020年までに1990年比で最低18%削減するなどの対策を定めています。
ここでは先進国に対して温室効果ガスの排出量を削減する数値目標が定められ、未達成の場合は排出量の枠を購入するか、排出量取引で排出枠を売却できないなどのペナルティがありました。
欧州各国では達成の目処が立つも、大型排出国のアメリカは批准せず、カナダは自国経済を支える石油生産でCO2排出量が増えたことから、目標の達成は難しいと考えて、後に脱退します。
また本議定書の議長国であった日本も、東日本大震災の影響で原子力発電が使えず、石炭を燃やすことによる火力発電に依存せざるを得なかったため、義務が果たせませんでした。
そのため京都議定書は、先進国だけに数値目標達成の義務を課す、不公平な内容であるとの批判が起こり、削減の数値目標がない途上国の中国やインドなどは、大幅に排出量を増やしたのです。
それが地球温暖化に、ますます拍車をかける結果となりました。
パリ協定:対象国が拡大するが、罰則規定などの拘束力はない
2015年12月、フランス・パリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において気候変動を抑制させる多国間の国際的な協定として採択され、翌2016年に発効されました。
気候変動に関する枠組みとしては京都議定書以来18年ぶりに作られたもので、京都議定書が2020年までの地球温暖化対策を定めたものであるのに対し、こちらは2020年以降の対策を定めています。
内容は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前から2度未満に抑え、平均気温上昇1.5度未満を目指すもので、地球温暖化の加速や世界の平均気温上昇で気候変動リスクが高まったことがその背景です。
京都議定書では、先進国だけが温室効果ガス排出量削減義務が課せられるという内容だったため、発展途上国も含めた他の国家にも対象を広げるべきだという意見が出てきました。
当初は様子見だった発展途上国ですが、CO2の大型排出国であるアメリカと中国が温暖化対策に積極的になったことで、次々と参加の意向を示すようになっていきます。
その結果、気候変動枠組条約に加盟した全196か国が参加することとなり、世界の多くの国家が参加をしたことで、非常に大きい意味を持つものとなりました。
こうして対象国が拡大しましたが、一方で多くの国家に参加を促すことを目指したためか、目標提出義務はあるものの目標達成義務はなく、罰則規定が設けられていないことが特徴です。
温室効果ガス排出量削減に向けた世界の流れ
パリ協定を受けて、世界的に温室効果ガス排出量削減の流れが強まりました。
たとえば、温室効果ガス最大の排出国である中国は、2030年までにGDPあたりの排出量を、2005年比で60~65%削減することとし、上位排出国のインドも30~35%削減する目標を打ち立てます。
また日本も、2030年までに排出量を、2013年比で26%削減する目標を打ち立て、他にもシンガポール・カナダ・スイスなどが2030年までに30%削減する目標を打ち立てるに至りました。
しかし世界各国が、パリ協定に基づいて打ち立てた目標を達成したとしても、気温は3.2度上昇するという計算結果が出ており、温暖化解消の決定打とはならないようです。
そこでパリ協定では、5年に一度削減目標を見直す取り決めがあります。
こうすることで、その時々の状況を見ながら、より一層厳しい削減目標を出し直すことができて、排出ゼロに向けた取り組みを強化させることができるようです。
まとめ
京都議定書、パリ協定と、地球温暖化を抑えるために世界各国間で取り決めを構築しても、各国間の思惑も絡んで、その流れはなかなか食い止められていません。
しかし世界の平均気温が2度上昇したら、海面上昇による国土消失や、干ばつによる食糧危機、水不足による生態系破壊、少ない食糧をめぐる紛争などが発生すると予想されています。
これに加えて、水の蒸発で雲ができやすくなり、その影響でゲリラ豪雨が頻発するなどの異常気象も多く発生し、人々の生活に大きく影響を与えていると言えるでしょう。
そうなると人類は、地球上で生存することが非常に困難になります。
地球温暖化というのは、単に気温が高くなるだけでなく、人間の生活に大きく影響し、ひいては地球そのものの存亡にも影響を及ぼすと言えるでしょう。
わたしたちの住む地球が、温暖化の影響で消滅することがないように、電気の無駄遣いをやめたり、外出に電車やバスを積極的に使ったりするなど、自分にできることから始めるようにしたいですね。
【参考】
NHK就活応援ニュース「1からわかる!地球温暖化(2)パリ協定と京都議定書、何が違うの?」
武蔵村山市「地球温暖化とは? どうなってしまうの? 私たちにできることは?」
WWFジャパン「京都議定書とは?合意内容とその後について」
ZEROC PLUS「【5行でわかる】パリ協定とは?達成できない?各国の目標についても解説」
朝日新聞 SDGs ACTION! 「パリ協定とは? 決定した内容を、要点を絞ってわかりやすく解説」
Sus&Us編集部