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街路樹はいらない?その必要性や問題点を解説

私企業による街路樹の伐採・枯死問題や、明治神宮外苑の再開発に伴う樹木伐採など、樹木を巡る議論が過熱しています。
本記事では、街路樹の歴史を振り返りつつ、その必要性や問題点を解説していきます。

街路樹の歴史

日本における街路樹の歴史は8世紀の奈良時代に遡り、日差しを避ける休憩場所、飢えをしのぐための食糧として道の両側に果樹を植えることが国策として進められたとされています。また、江戸時代には全国の街道で並木が整備され、「世界一長い並木道」として知られる日光杉並木(下記写真)や東海道松並木など現在に続いているものもあります。

幕末以降は近代化の過程で西洋の都市に倣った並木の整備が進められるようになりました。1867年の横浜市馬車道、1873年の銀座における植栽がその代表例といえます。

近年では、高木については1987年から2002年までに約300万本が植えられ、以降は横ばい傾向となっており、2017年時点で全国に約670万本が植えられています。

中低木は1987年から1997年に約6900万本、1997年から2007年に1238万本が植えられ、以降の植樹数は減少しており、2017年時点で全国に約1億4100万本が植えられています。

歴史的に見ても都市にとって街路樹は欠かせない要素の一つとなっていることがうかがえます。

街路樹の必要性・機能

街路樹は人間あるいは他の生物にとって快適な環境をもたらす、さまざま役割を果たしています。

①景観の形成
人工的で無味乾燥になりがちな街並みに彩りをもたらし、季節の変化を告げ、人々の心に安らぎや憩いを与える。

②生活環境の保全
夏の日差しを遮り、騒音を和らげるなど通行時や休息のための快適な空間を提供する。

③自然環境・生物多様性の保全
都市化により失われた自然環境を回復する、昆虫や鳥などの動物に生活環境を提供する。

④交通安全
車と歩行者を分離する、ヘッドライトの眩しさを低減する、並木がカーブなど道路の線形を把握させやすくし、安全な運転を促す。

⑤防災
火災の広がりを防ぐ、地震によって建物が道路に倒壊するのを防ぐ。

⑥二酸化炭素、窒素酸化物等の吸収
大気中の二酸化炭素を吸収することにより地球温暖化・ヒートアイランド現象の抑制につながる、自動車の排気ガス(窒素酸化物)や粉塵を吸収し大気を浄化する。

街路樹の課題・問題点

一方、問題点も指摘されており、近隣住民の生活や道路利用者の通行に及ぼす影響も大きいことから、苦情を訴える声も少なくありません。

①倒木、落ち葉、根上がり
倒木や落ち葉、落ち枝により道路を通行する車両や歩行者等に直接的な被害をもたらすことがある。また、根が太く成長し、歩道の縁石や舗装を持ち上げることで、通行に支障が生じる。特に都市環境は必ずしも樹木の生育にとって最適な環境とはいえないため、栄養不足に陥り上記を招きやすい。

②病虫害
毒性を持つ害虫が通行人を攻撃する、菌類が樹木を腐らせ倒木につながる。

③見通しの阻害
標識・看板が見えなくなる、街路灯を遮光する、海など見晴らしのいい景色を隠してしまう。

④地下埋設物の管理の阻害
根が排水管など地下の埋設物を傷めたり、工事の支障になる。

⑤維持管理コスト
定期的な剪定や落ち葉等の清掃、根上がりの解消など、街路樹の維持管理には相応のコストがかかり、税金によって賄われている。

⑥その他
樹木の影が田畑の日照不足につながる、電線等と競合する、地域性や将来樹形を想定していない樹種の選定や未熟な剪定技術により景観が損なわれる。

まとめ

以上見てきたように街路樹には多くのメリットとデメリットが存在します。特にそれらは私たちの快・不快に深く関わることもあり、その是非について感情的な反応も少なくありません。
動植物を含めた地球環境のありようにまで視野を広げつつ、自身が根ざす地域がどのように樹木と暮らしていくか、知識と実感の両面から考えるべき時期が来ているように思われます。

【参考】
国土交通省国土技術政策総合研究所「第2章 道路緑化樹木の推移」『わが国の街路樹 Ⅷ』
飯塚康雄「街路樹の現況と維持管理における問題点」
細川卓巳「東京都における街路樹の取り組みとこれから」
野村徹郎「美しい街路樹景観と植栽基盤」
篠塚正義、重岡昌代、渡邊政彦「緑地及び街路樹による大気浄化機能の評価」

Sus&Us編集部

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