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持続可能な農法、垂直栽培とは?

今回は、SDGs2「飢餓をゼロに」、SDGs11「住み続けられるまちづくりを」とも関わりがあり、持続可能な農法の一つである垂直栽培について解説します。また、食料危機の対策として垂直栽培を取り入れた取り組み事例を紹介していきます。

垂直栽培

垂直栽培とは、文字通り植物を垂直に並べて立体的に栽培する農法です。通常の水平な土地に並べて栽培する方法と違い、都市部や地下、屋内などの限られたスペースで効率的に農業を行う手法の一つとして、植物を育てるには土地の狭い国や環境の厳しい国で注目されています。

屋内のような日光の当たらないスペースでも、LEDを使って植物が成長しやすい波長の光を照射することで、効率的に成長を促進することが可能となっているのです。太陽光には紫外線や赤外線も含まれているため、植物にもダメージを与えてしまいますが、LEDではその植物に合った波長の光に調整することができるため、太陽光で育ったモノよりもビタミンなどの栄養価が高くなるという実験結果も出ています。

また、屋内や地下で育てる場合は、台風や豪雨などの天候に左右されないため、自然災害などの影響を受けにくい農業インフラという部分でも、持続可能な農法である垂直栽培の強みと言えるでしょう。

垂直栽培の取り組み事例

ここからは垂直栽培を取り入れた企業の取り組み事例について紹介していきます。

①株式会社マラナタ
壁面緑化や次世代農業などの事業を手掛ける株式会社マラナタは、食料危機の対策としてコンテナを活用した果菜の垂直栽培を計画しています。コンテナで垂直栽培を行うメリットとして、気候や災害に左右されない点。通常の平面で行う農法と比べると、同じスペースで約8倍の生産が可能となる点。温度や湿度管理などの自動化されたシステムにより効率的な栽培が可能な点。一年中高品質で新鮮な果菜を生産できる点があげられています。また、中東などの砂漠気候の土地でも栽培することができるという強みは、植物栽培の向かない環境下においても、持続可能な食料生産を可能とすることが期待されるでしょう。

また、コンテナ内の壁面で垂直栽培を行うため、高さの調整が可能となり、かがんでの作業を必要としません。これは農業人口の6割が65歳以上とされている日本においては、農業従事者の負担を減らし作業効率の向上、生産性の向上にも繋がるということです。

農業に向いた土地が狭く、少子高齢化の進む日本において、コンテナを活用した垂直栽培はまさに救世主となる農法かもしれません。

②エミレーツ・クロップ・ワン
アラブ首長国連邦のドバイを本拠とするエミレーツ航空グループのエミレーツ・フライト・ケータリング(EKFC)とクロップ・ワンの合弁事業、エミレーツ・クロップ・ワンでは、ドバイに世界最大級と言える垂直農園の「Bustanica」を開設しています。その広さは約30658平方メートルにも達します。日本の建物で例えるとあべのハルカスの敷地面積と同程度です。また、植物を通じて水を循環させることで年間の水の使用量を95%節約することを可能とし、農薬や除草剤、化学薬品の使用も必要とせずに年間100万キログラム以上の農産物が生産可能となっています。

まさに、農作物の自給自足が困難な土地においてぴったりの農法であり、中東地域における食料生産と供給においての持続可能な成長を促すための重要なステップであると言えるでしょう。

まとめ

山林が多いため、農業に向いた土地が少なく食料自給率の低い日本や環境の厳しい中東地域においては、垂直栽培は有効的な農法の一つとなっています。

環境や害虫、それに伴う病気の影響を受けないという点は、高品質で衛生的な農作物を供給できるということでもあり、持続可能な生産方法かつ、安全で高品質な農作物を生産可能とする屋内での垂直農法の今後の普及が期待されます。

Sus&Us編集部

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