記事・コラムTOPICS

EV普及を阻む数々の要因とは?(前編)

英政府が発表した自動車にまつわる2つの施策とは?

2023年9月28日、イギリス政府が自動車メーカーに対してEV(電気自動車)をはじめとしたZEV(ゼロエミッション車)の販売義務化を公表しました。報道によると、義務化は2024年開始予定で、年間販売台数が2500台以上の自動車メーカーが対象。販売台数におけるZEVの割合が目標値として設定されており、2024年に22%、26年に33%、28年に52%となるように段階的に目標値を上げていき、2030年時点で80%の割合に達することを目指していることが明らかになっています。
高い目標設定から、EVの技術革新に期待を寄せていることが伺えるこの宣言。脱炭素に積極的な欧州らしい施策とする見方がある一方で、実は、英政府は同月20日にガソリン車とディーゼル車の新車販売の禁止を2035年に5年先送りすることも発表しています。ちぐはぐに思える二つの方針ですが、その背景には脱炭素に向かいたい思いと、そこに立ちはだかる障壁を見据えた現実思考が共存しているようです。
そして、実はこうしたEVやガソリン車に対しての相反する思いを抱えるのは、日本も同様のようです。今回の記事では、そうしたZEV普及の障壁について紹介していきたいと思います。

そもそもEVは脱炭素に効果的なのか。

ZEV、特に日本でのEV普及を語る際によく言及される話題があります。それは、“そもそもEVは脱炭素に効果的なのか”です。
まず、EVが脱炭素に効果的とされるのは、走行中に二酸化炭素(以下、CO₂)を出さないためです。例えば、国土交通省が発表した統計によると2021年度における日本の運輸部門からのCO₂排出量は約1億8,500万トン、自動車全体ではその内の86.8%にあたる1億5,547万トンを排出していたといいます*1。このうちの大半を占めているCO₂がEVによって低減されるのですから、その効果は非常に大きいものと期待できるでしょう。
では何故、EVのCO₂削減効果が疑問視されているのかといえば、一つは動力源である電気を生み出す際にCO₂を排出すること。もう一つは、EV製造時のCO₂排出量がガソリン車と比較して非常に多いことが挙げられます。前者に関しては各国の電源構成比の影響が大きいことに加え、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の発展による改善の余地がありますが、後者に関しては改善の難易度は高いといえるでしょう。
国際エネルギー機関(IAEA)によれば、自動車の生産から走行、廃却に至るライフサイクル全体のCO₂排出量はガソリン車で1台当たり34トン、EVで1台当たり28トンだとされており一般社団法人日本自動車工業会が図表にもまとめています*2。その中で、ガソリン車ならば製造にかかわるCO₂排出量がライフサイクル全体の18%に当たる約6トンであるのに対し、EVでは全体の46%に当たる約13トンと倍以上の量であることが判明しており、EVのCO₂排出量の多さが見て取れます。また、ライフサイクルでは廃却時点のCO₂排出量も計算に入れるため、廃却時のCO₂発生量が大きい点もEVの逆風となることでしょう。こうした点も踏まえてライフサイクル全体でEVがガソリン車よりもCO₂排出量で優位に立つには、日本の場合では11万キロの走行が必要になることも報じられています。

走行時のCO₂排出を抑えることだけがEVの脱炭素ではない。

とはいえ、走行時にCO₂を排出しない点がEVの大きな強みであることに間違いはありません。そして、その優位性を確固たるものにすべく、自動車メーカーが再エネ開発に乗り出す動きも顕著となっています。
例えば、フォルクスワーゲンは、発電事業者の太陽光や風力の発電所建設プロジェクトに投資することを2021年に発表しています。参加するプロジェクトを全て合わせると2025年までに60万世帯の年間電力使用量に相当する70億キロワット時の電力を生み出す計算であり、大きな再エネ電源となります。日本でもEVに積極的な日産を始め、製造工程で再エネ電力を採用してEV製造時のCO₂を抑えようとする企業は多いものの、国のインフラからEVが普及しやすい環境を創試みとしては非常に珍しいと言えるでしょう。
EVがもたらすCO₂排出量削減効果は、現在の技術では大きいものではないのかもしれません。ただ、その存在が旗印となれば、再エネの発展などに様々な影響をもたらし、最終目標である脱炭素に大きく貢献することになるかと思います。

後半では、EV普及に関するもう意図つのテーマ、車載バッテリーについてお話します。

Sus&Us編集部

この記事をシェアする

TOP