記事・コラムTOPICS

SDGsアクションプラン2023とは?ポイントを詳細解説

日本におけるSDGsの課題や取り組みを整理した「SDGsアクションプラン」をご存知でしょうか。
このプランを把握すると「SDGsの今」がわかり、全体像を理解しやすくなります。

本記事では同プランの最新版である「SDGsアクションプラン2023」をわかりやすく読み解いていきたいと思います。

SDGsアクションプランとは

SDGsアクションプランとは、日本が行っているSDGsへの施策をまとめた文書で、毎年更新されます。

全世界的な目標であるSDGsですが、その取り組みは各国の状況に応じて進められることとされています。

日本では、内閣に設置された「SDGs推進本部」を中心に取り組みを進めており、その内容が「SDGsアクションプラン」にまとめられているのです。

2023年3月には「SDGsアクションプラン2023」が発表されており、こちらから読むことができます。

SDGsアクションプラン2023の重点事項

SDGsアクションプラン2023は、8つの重点事項で構成されています。

重点事項は5つのP(People 人間、Planet 地球、Prosperity 繁栄、Peace 平和、Partnership パートナーシップ)に基づいて設定されており、全体像は下記のようになります。


【People 人間】
①あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
②健康・長寿の達成

【Prosperity 繁栄】
③成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
④持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備

【Planet 地球】
⑤省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
⑥生物多様性、森林、海洋等の環境の保全

【Peace 平和】
⑦平和と安全・安心社会の実現

【Partnership パートナーシップ】
⑧SDGs 実施推進の体制と手段

これら8つの課題について、目標や具体的な取り組みが示されています。

課題ごとの記載事項をわかりやすくまとめましたので、一つずつ見ていきましょう。

①あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現

◆年齢や性別、国籍などを問わず、誰もが個性を発揮して活躍できる社会をつくるため、多様性を尊重する「ダイバーシティ」やマイノリティの人々の障壁を取り除く「バリアフリー」を推進する。また、働き方改革により、働きがいをもって人間らしく働く「ディーセント・ワーク」を促進し、ワークライフバランスの実現を図る。

◆女性の活躍を推進するべく、「第5次男女共同参画基本計画」や「女性活躍・男女共同参画の重点方針」等に基づき、男女間の賃金格差是正や成長産業であるデジタル業界での女性人材の育成、女性の登用目標達成(下記参照)、経済的な理由で生理用品を購入できない「生理の貧困」への支援、女性に対する暴力の根絶などを推進する。

【女性の登用目標(第5次男女共同参画基本計画より)】
・2025年までに下記を達成─など
衆議院議員の候補者に占める女性の割合:35%(2021年17.7%)
参議院議員の候補者に占める女性の割合:35%(2022年33.2%)
民間企業における男性の育児休業取得率:30%(2021年13.97%)
民間企業の係長職に占める女性の割合 :30%(2022年24.1%)
民間企業の課長職に占める女性の割合 :18%(2022年13.9%)
民間企業の部長職に占める女性の割合 :12%(2022年8.2%)
第5次男女共同参画基本計画における成果目標の動向より)

◆7人に1人が相対的貧困(参考:キーワードでわかるSDGs「相対的貧困」)であるという「子供の貧困」対策や、気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇、貧困の拡大といった様々な問題に取り組む人材を育成するための「持続可能な開発のための教育(ESD)」を推進する。

◆「ビジネスと人権」の取り組みを進める。欧米では企業に対し人権配慮を求める法律を導入する動きもあるなど、ビジネス・企業活動において人権の尊重を求める気運が高まっており、日本企業にも、人権への影響を調査し、予防し、対処する一連の対応(人権デュー・ディリジェンス)が求められる。

◆外国人との共生社会の実現に向け、「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」等に基づく環境整備を進める。同ロードマップには2026年までの計画が明示されており、日本語教育支援や子育て支援、職業訓練、各種実態調査などが掲げられている。

②健康・長寿の達成

◆国際保健に関する目標や取り組みを記載した「グローバルヘルス戦略」に基づき、新型コロナウイルス対策をはじめとするパンデミック等への予防・備え・対応の強化を図る。

◆国際社会におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取り組みを促進する。UHCとは「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」を指し、日本は早期に国民皆保険制度により達成しているため、他国への主導的な役割を果たすことが期待されている。

◆感染症対策の司令塔機能を強化するため、米国の疾病対策センター(CDC)をモデルに、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、感染症の調査・分析から臨床対応までを一体的に担う「日本版CDC」を創設する(2023年5月31日に設立法が成立、2025年度以降に設立が決定)。

◆人々がより健康的な食生活を送れるようにするべく、産官学等連携の体制として立ち上げた「健康的で持続可能な食環境づくりのための戦略的イニシアチブ」を通じ、「食塩の過剰摂取」「若年女性のやせ」「経済格差に伴う栄養格差」といった課題等の解決に向けた食環境づくりに取り組む。

③成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション

◆国内外の社会課題解決やイノベーションを促すため、日本企業と海外スタートアップ等とが知識や技術などを共有し、組み合わせて新たな価値創出を図るオープンイノベーションを推進する。また、開発途上国・新興国への日本の中小企業等の進出を支援し、現地の経済発展や社会課題解決につなげる。

◆SDGs達成に向けた優れた取り組みを行う自治体を選定し、資金的な支援や情報発信を行う「SDGs未来都市」を継続するとともに、新たに複数の自治体が連携した取り組みも促進する。関連して次の施策も行う。

・「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」の活用
官民連携を促進するためのマッチングなどをサポート。

・地方創生SDGs登録・認証等制度の展開
SDGsに取り組む地域事業者を見える化するため、自治体ごとに事業者の登録・認証制度を設置。

・「地方創生SDGs金融」による取り組み推進
SDGsに取り組む地域事業者に対し、地域金融機関が支援する取り組みを進めるため、優れた事例を表彰し横展開を図る「地方創生SDGs金融表彰制度」が2022年よりスタート。

◆地域の課題解決のための技術の活用や地方への新たな人の流れを促進するため、過疎地域における人材育成やICT等技術の活用、団地造成や空き家を活用した住宅の整備等を支援するとともに、次の取り組みを推進する。

・スマート農林水産業
環境負荷の低減を図るため、農業や林業、水産業にロボット、AI、IoT等を活用し、作業の自動化や省力化、データ活用による効率化を進める。

「デジ活」中山間地域
人口減少や高齢化が進行し、農業の効率性や生活サービス、交通手段などの課題を抱える中山間地域の活性化を図るため、地域資源やデジタル技術を活用して支援する。

◆農林水産物に関する新事業や付加価値の創出といった「農山漁村発イノベーション」の推進や、地域コミュニティの維持活動を行う組織(農村型地域運営組織)の形成等による農山漁村の活性化を支援する。

◆各地域において、医療や交通などの複数の生活サービスを連携して新たなサービスを創出し、地域幸福度の向上を図るための基盤を整備することで、「デジタル田園都市国家構想」を実現する。デジタル田園都市国家構想は「新しい資本主義」の柱の一つとされ、デジタル技術を活用し、地域の個性を活かしながら社会課題の解決、魅力向上を実現するというもので、通信インフラの整備やICTを活用した交通ネットワークの構築、デジタル人材の育成などが掲げられている。

④持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備

◆大規模災害等に対応するための施策をまとめた「国土強靱化基本計画」に基づき、デジタル等新技術の活用や官民の連携強化により、災害に強い国づくりを推進する。

◆世界的な水問題への日本の貢献策として発表された「熊本水イニシアティブ」に基づき、気候変動適応策・緩和策を両立するハイブリッド技術を活用した「質の高いインフラ」整備を推進する。具体的には、ダム、下水道、農業用排水施設などによる治水とクリーンエネルギー創出などが掲げられている。

◆途上国に対しては、「質の高い成長」を実現するために不可欠である、水道、道路、発電所等のインフラ整備について、それぞれの国・地域の経済・開発戦略に沿った形で、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を踏まえたインフラ投資を引き続き支援する。また、金融当局に対する技術協力・人的交流を引き続き実施する。

⑤省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会

◆温暖化への対応は経済成長の制約ではなく、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の下、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指す。壁面などより多くの場所に設置可能な次世代型太陽電池、工場等が排出した二酸化炭素を製品・燃料に再利用するカーボンリサイクルなど、革新的なイノベーションに関する研究開発を促進するとともに、ESG投資の拡大も推進する。また、グリーン分野における大学等の基盤研究開発と将来技術を支える人材育成を推進する。

◆化石エネルギーからクリーンエネルギーへの転換を図るグリーントランスフォーメーション(GX)推進に向けて、「GX実現に向けた基本方針」に基づき、下記などの施策を進めていく。

・成長志向型カーボンプライシング
企業などが排出する二酸化炭素に価格をつけ、排出量を取引したり、排出量に応じた負担金を設定したりするなどして脱炭素を推進する。

・規制・支援一体型の投資促進策
経済成長と二酸化炭素排出削減のいずれにも貢献する分野に対し、20兆円規模の「GX経済移行債」(仮称)をよる支援を行う。

・トランジション・ファイナンス
長期的な戦略の下で温室効果ガス削減に取り組む企業を支援する金融・資金調達の手法を推進する。

・アジア・ゼロエミッション共同体構想
水素やアンモニアなど日本のゼロエミッション技術や制度、ノウハウを生かし、アジア脱炭素化に貢献する。

◆自治体や地域企業、市民など地域関係者が脱炭素に取り組む「地域脱炭素」を財政支援により推進し、2050年を待たず前倒しでカーボンニュートラル達成を実現する「脱炭素先行地域」を2030年度までに少なくとも100か所創出する。また、環境面だけでなく地域の社会・経済の課題解決にも貢献する「地域循環共生圏」の創造による持続可能な地域づくりを推進する。

◆食料・農林水産業の生産力向上と持続性を両立させるため、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」及び「みどりの食料システム法」に基づき、資材・エネルギーの調達から生産、加工・流通、消費に至るまでの環境負荷低減と持続的発展に向けた地域ぐるみのモデル地区を創出する。また、取り組みの見える化や、有機農産物の販路拡大などを促進する。

◆食料の多くを輸入に依存している日本において食品ロスは大きな課題であり、食品ロス量を2030年までに2000年度比で半減となる489万トンまで減らすことを目標に、事業者・消費者双方が取り組む(参考:キーワードでわかるSDGs「食品ロス」)。

⑥生物多様性、森林、海洋等の環境の保全

◆2030年までに達成すべき生物多様性に関する世界的な目標などを定めた「昆明・モントリオール生物多様性枠組」への貢献を図る。具体的には、里山のような人間が周囲の自然と寄り添いながら生活する二次的自然地域の維持・再構築を通じて自然共生社会の実現を目指す「SATOYAMAイニシアティブ」等を通して日本の取り組みを広めていくほか、下記を実施する。

・国内施策の指針として次期生物多様性国家戦略を策定
2023年3月31日に「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定。生物の多様性損失を止めるための戦略などが記載されている。

・保護地域の拡充及びOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)の設定
「2030年までに陸域・海域の30%以上を健全な生態系として保全する(30by30:サーティ・バイ・サーティ)」という目標を実現するため、保全する地域を増やす。現時点では、陸域の約20%、海域の約13%が国立公園などの保護地域となっている。

・ビジネスでの生物多様性の主流化の推進
企業が生物多様性の保全の重要性を認識し、ビジネスに反映させる。

・グリーンインフラなど自然を活用した解決策(Nature-based Solutions)の推進
緑地や雨水貯水による豪雨対策など、自然環境が持つ機能を防災や地域創生、環境保全などに生かす。

◆国立公園の保護と利用による地域活性化を図る「国立公園満喫プロジェクト」に取り組み、美しい自然の中での感動体験を柱とした滞在型・高付加価値観光を推進する。

◆2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減する「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を推進する。

⑦平和と安全・安心社会の実現

◆紛争、気候変動、新型コロナ、ロシアによるウクライナ侵略に起因する食料・エネルギー価格の高騰等に対し、必要な緊急人道支援を提供するとともに、国連機関等と協力して、平和構築・復興支援・地域の安定のため人道・開発・平和の切れ目のない支援を継続する。

◆アジアとアフリカの連帯などを目指す「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を推進する。

◆日本政府が主導するアフリカの開発をテーマとする国際会議での議論(TICADプロセス)を通じ、アフリカにおけるSDGs各ゴールに関連する取り組みのモニタリングやフォローアップを実施していく。

◆子どもに対する暴力をなくすため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を充実させるとともに、SNS等を活用した相談体制の整備を進める。また、途上国における児童労働や強制労働を含む脆弱な労働者の保護や、労働安全衛生の推進に向けて、国際機関、民間企業や市民社会との連携等を通じて具体的な取り組みを進める。

◆弁護士等のサービスをより利用しやすくする総合法律支援の充実や日本法令の外国語訳等により、国際取引の円滑化や外国人を含む全ての人の司法アクセスの確保を図る。

⑧SDGs実施推進の体制と手段

◆2023年に改定を行う「SDGs実施指針」も含め、SDGs推進円卓会議を中心に、国内外のあらゆる関係者との連携を促進・強化する。また、SDGsの進捗状況を測るためのSDGグローバル指標に関する情報を発信する。

◆政府開発援助(ODA)の一層の戦略的活用を図るため、2023年前半を目処に開発支援の在り方を定めた開発協力大綱を改定する。また、SDGsが掲げる「国民総所得(GNI)のうちODAの割合を、開発途上国に対して0.7%にする」目標の達成を目指す。

◆2023年に予定されているSDGサミットや持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)、日メコンSDGsフォーラム等に積極的に参加するとともに、SDGsの中間年である2023年を国際社会のSDGs達成に向けた転機とすべく、各国・地域や国際機関との連携強化を図る。

まとめ

SDGsアクションプランを読めばSDGsに関する日本の取り組みの全体像がわかります。中には聞いたことのなかった取り組みもあったのではないでしょうか。

興味のある方は文中のリンク先も確認するなどし、理解を深めていただければ幸いです。

この記事をシェアする

TOP