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【デザインから見るSDGs】第一回:株式会社 明治「明治プロビオヨーグルトR-1」

 再エネ電力やジェンダーレス化、フードロス対策に海洋資源問題など、私たちの生活にSDGsが溶け込んでいることは、今や言うまでもありません。しかし2023年現在においても、SDGsと聞けば「何やら面倒くさそうだ」「小難しい」という印象を持つ方が多くいるのも事実です。
 そこで、デザイン会社を母体に持つSus&Us編集部では、SDGsを少しでも身近に、少しでも楽しく感じてもらうために「SDGs×デザイン」の観点から、身の周りに溢れるSDGsグッズや関連商品、施設のデザインを解説。
 一見、面白みがないようにも思えるSDGsグッズの裏にはどんなデザイン的な見どころがあるのか、それどころかデザインの力が如何にSDGsを加速させているのかを紹介していきます。
 
 では、記念すべき第一回の題材はこちらです。

明治の大ヒット商品がラベルレス化

 株式会社 明治(以下、明治)が展開するヨーグルトブランド「明治プロビオヨーグルトR-1」(以下、R-1)といえば、2009年の発売以来、赤いラベルでお馴染みのヒット商品。皆さんも一度は手に取ったことがあるかと思います。このトレードマークになっている赤いラベルをはがした、ラベルレスボトルのドリンクヨーグルトがあることを皆さんはご存じでしょうか。

「これからの地球のために 一肌脱ぎました。」のキャッチコピーと共に、ラベルレスのドリンクヨーグルトが発売されたのは2022年8月のこと。対象商品は「明治プロビオヨーグルトR-1ドリンクタイプ」と「明治プロビオヨーグルトR-1ドリンクタイプ低糖・低カロリー」の2種類で、6本入りパックの商品から赤いプラスチックラベルを取り払いました。
 小さいボトルの薄いラベルですが、この試みによって使用するプラスチック量は約8.5%も削減。株式会社 明治を含む明治グループは、プラスチック製品の使用量削減や環境配慮型素材の使用拡充に積極的に取り組んでおり、2030年度までに国内の容器包装などのプラスチック使用量を25%以上削減することを公言しています(2017年度比)。
 今回の取り組みもその一環として行われたものですが、他にも明治ではペットボトル容器における再生プラスチック、バイオマスプラスチックの使用率を2025年度までに70%以上、2030年度までに100%とすることも目指すなど、様々な取り組みを行っています。
 興味のある方は、是非、明治ホールディングス株式会社の統合報告書から確認してみてください。

【明治ホールディングス株式会社の統合報告書はこちら】
https://csr-toshokan.net/index.php?page=csr_view.pdf_viewer&from=search&csr_id=6859&

ラベルレスのR-1に見る2つのデザイン的な特徴

 R-1のラベルレス化は、SDGsの達成に向けた取り組みとしても興味深いものですが、これを可能にしている背景として、その優れたデザイン力も見逃せません。中でも特徴的な2つのポイントを見ていきましょう。

①トレードマークの赤いラベルがあるからこそ、白いラベルレスとのギャップが際立つ。

 冒頭でも述べたように、R-1の赤いラベルは商品のトレードマークとなっています。2022年9月6日に新聞に掲載されたラベルレスボトルの広告でも「あの赤いR-1から、ニュースです。」「ラベルレスの白いR-1 毎日続けやすい6本入りで新登場!」と、その色彩を活かしたコピーを展開。明治としても派手な赤からシンプルな白へのギャップが、購入層に大きなインパクトを与えると考えたのでしょう。

 実際、赤×白は赤を一際目立たせる配色として有名です。十字マークや救急車といった緊急を要するものに使用されているのはもちろん、日本では紅白が持つ縁起の良いイメージも合わさって非常に重宝されている配色です。また、赤と白それぞれを単体で見た場合にも、赤はパワーや活力、元気といった力強い印象を、白は安全性や信頼感といった落ち着いた印象を与えるものとなっており、R-1のイメージにピッタリといえます。
 今回のラベルレスボトルも赤い紙パッケージに入っており、紅白の配色が成立しています。ラベルレスの取り組みに思い切って踏み込めたのは、ラベルを外しても十分なデザイン性を保てるから、という自信があったからかもしれません。

②ラベルを外すことで強調されるボトル本体の機能美

 赤い地色に力強いフォントで描かれた商品名。非常にパワフルなデザインをしているR-1のラベルですが、それ故に、外したときには印象が大きく変わります。“シンプル”“地味”“そっけない”など、感想は人それぞれあるかもしれませんが、Sus&Us編集部が目を付けたのは、その機能美。ヨーグルトの白さも相まって浮き彫りになったボトルの形状は、非常に洗練されたシルエットをしています。

 実際、R-1やLG21といった「明治プロビオヨーグルト」のドリンクタイプは、全てこの形状のボトルに統一されており、明治が如何に自信を持ってデザインしたかが伺えます。乳酸菌飲料では、株式会社ヤクルトの主力製品である「ヤクルト」のプラスチック容器について立体商標が認められていますが、「明治プロビオヨーグルト」もいずれはそれに続くのかもしれません。
 また、ご存じの方も多いかもしれませんが、2020年代のデザインは必要最低限の要素で構成する「ミニマリズム」がトレンドの一つとなっています。派手で個性的なコンテンツが購買層の嫌悪感を煽りかねない一方、主張を排除したシンプルなデザインは、そのリスクをミニマム(最小)にしてくれるからです。さらに、近年はSDGsの潮流が高まっていることもあり、シンプルで余計なものが付属しないことをポジティブに捉えるようになっています。
 まさにラベルを省くことで、製造コストを下げ、環境負荷に配慮でき、洗練されたデザイン性も発揮できる一石三鳥の取り組みなっているのです。

 このようにR-1のラベルレスボトルはSDGsの観点から見ても、デザインの観点から見ても非常に興味深い商品となっています。
 Sus&Us編集部では、これからも身近なところにあるSDGs商品や取り組みのデザインについて解説していきたいと思います。次回もどうぞお楽しみにしてください。

Sus&Us編集部

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