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楽器メーカーのSDGsへの取り組み

皆さんは最近、何か楽器を手に取りましたか?
最近は触れていない方でも、幼少期にピアノを習ったり、授業で使ったリコーダー、学生時代に挑戦したギターなど、記憶に浮かぶ楽器が一つはあるかと思います。

私たちが触れてきた楽器を製作をする過程では、大量の端材や採用されなかった材料が発生します。また、使用されていた楽器も耐用年数を過ぎると廃棄楽器となってしまいます。この問題に対する楽器メーカーの動きとして、SDGsのゴール12「つくる責任、つかう責任」とも関わりがある、アップサイクルを活用した取り組みが行われています。

本記事では、楽器メーカーのアップサイクルの取り組み事例を紹介します。

アップサイクルとは?

アップサイクルとは、廃棄されるはずだった製品に、デザイン等のアイデアを元に新たな付加価値を与えることで、新しい製品として生まれ変わらせ、再利用することを言います。着なくなったジーンズや衣類を鞄にしたり、使い道の無くなった学校用品を家具として生まれ変わらせたりといった事例があります。

リサイクルやリメイク、リユースとの違い

リサイクルは、捨てられるゴミから原料や材料を抽出して資源として再利用することを言います。再生紙やリサイクルペットボトル等が具体例となります。

リメイクは既存の製品にアレンジを加えることを言います。アップサイクルとも共通する部分がありますが、こちらは必ずしも価値を高めるという点に比重を置いているわけではありません。洋服などにボタンやワッペンなどでワンポイントを加えるなどして、作り直すことを言います。

リユースとは、使い古された製品にアレンジを加えるわけではなく、そのまま再利用したり修理をして使ったりすることです。服や本、楽器など、自分に必要の無くなったモノを、必要としている人に譲ることがリユースに当てはまります。

このように、似た意味を持つ用語は複数ありますが、微妙なニュアンスの違いや目的の違いがあります。

ヤマハの取り組み

世界的にも有名な楽器メーカーであるヤマハは、銀座店にて2022年12月7日から「楽器の木」展を開催しています。世界のどこかで長い年月をかけて成長してきた木材を扱っている、楽器メーカーならではの持続可能な未来と向き合った展示となっています。第一弾ではヤマハの50年後、100年後を見据えたサステナビリティへの取り組みの一つとしてアップサイクリングギターが展示されました(第一弾展示は5月29日まで)。

楽器を作るためには多くの木材が必要となり、中には楽器には使うことができなかった材料や端材が発生します。ヤマハはこれらを「未利用材」と呼び、あまり使用されてこなかった木材なども含めて魅力を見直し、ギターの材料として蘇らせています。めざしているのは、新しい価値を創造したアップサイクルです。そのコンセプトモデルとして展示されたのが、今回のアップサイクリングギターです。

本プロジェクトは、単に未利用材をアップサイクルするだけでなく、あらゆる材料で高品質の楽器を作る技術の確立も目指しています。通常は採用されない木材で作られたアップサイクル品でも、自由な音作りがきちんとできる楽器に仕上げることで、楽器と奏者が一緒になって新しい良さを追求するための取り組みとなるのです。

このように様々な楽器製作の過程で発生した未利用材を再利用することで、新しい魅力を持った楽器を生み出す、楽器メーカーらしい素敵な取り組みとなっています。

島村楽器の取り組み

島村楽器では、楽器アップサイクルプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは廃棄楽器や耐用年数を過ぎた楽器部品、小・中・高等学校などから引き取った楽器が素材として再利用され、テーブルやスタンドライト、ウォールシェルフなどのインテリア製品に生まれ変わります。

生まれ変わったアップサイクル製品は島村楽器にて販売され、売り上げから販売諸経費を除いた金額が、国内外の楽器演奏の機会を得にくい子供たちへの寄付や楽器購入資金にあてられます。世の中に数多くある廃棄楽器や使われなくなった楽器に焦点を当て、もう一度命を吹き込むことで新しい形に再利用し、さらにその売り上げが本業の楽器購入にも使われるという、地球環境に配慮した、まさに持続可能な社会づくりに貢献する取り組みとなっています。

まとめ

今回は二つの事例を取り上げました。使わない端材からの新しい楽器の創造や、廃棄楽器を元にしたインテリア製品への生まれ変わり。どちらも楽器メーカーという特色を生かした取り組みを行っていました。

大量消費社会において、大量廃棄の問題の解決策として期待されるアップサイクル。廃棄品や不要な製品に付加価値を与えて再利用することが、持続的な生産と消費を目指すSDGs12「つくる責任、つかう責任」を達成することに繋がります。

アップサイクル製品を積極的に購入したり、個人でアップサイクルを行うことでもサステナブルな取り組みに貢献することができます。

こういった取り組みが新たな取り組みにつながり、サステナブルな社会づくりへの良い循環が生まれることが期待されます。

Sus&Us編集部

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