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企業報告書についての考察

Sus&Us編集部の所属する企業は、実はCSR図書館netというサイトも運営しています。

企業のサステナビリティレポート、統合報告書、CSRレポートなどの報告書を約760社、4,600冊掲載しているサイトで、日々、企業報告書を取り扱っている関係で、報告書のコンテンツやトレンドなどをよく知る立場です。

今回はその視点から、企業報告書についてあれこれ書いてみたいと思います。

企業報告書のはじまりと進化

企業報告書は、当初、環境報告書からはじまりました。
早くから環境規制を行っていた欧州との貿易を続けるため、グローバル企業が必要に迫られるように環境対策に取り組み、報告書を発行したからです。

1992年の環境と開発に関する国際連合会議(UNCED)、通称地球サミットで合意された27原則から成る「リオ宣言」、1997年の気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議:COP3)の温室効果ガス排出量削減についての国際条約「京都議定書」を経て、環境・社会問題は地球規模、国レベルとなるとともに、その義務が企業にも課され、企業報告書は環境報告書から社会・環境報告書、CSRレポートと進化していったのです。

なお、CSRとは、企業の社会的責任と訳され、企業が利潤を追求するだけでなく、社会への影響に責任をもち、社会的な存在として積極的な対話の必要を説いた概念です。
その後、サステナブル(持続可能)な企業活動は企業の事業そのものが社会的価値をもつべきであり、社会的価値と経済的価値を両立した事業を創造するというCSVという概念も生まれました。
こちらは、サステナビリティレポートという形で発行されるようになっています。

その延長上で、企業の社会的・経済的価値をどのように創造して経営してゆくのかを、主に投資家に向けて発信する統合報告書が発行されるようになっています。

企業報告書の変化

現在発行されている企業報告書は、主にCSRレポート、サステナビリティレポート、統合報告書です。
ページ数は年々多くなる傾向にあり、100ページを超える冊子も少なくありません。
当然ながら、厚く重くなった冊子を多部数で印刷しづらくなっているようです。
PDFのみという企業も散見されますが、少部数印刷であったり、抜き刷り冊子を作成したりと、使われ方を考えながら模索されている企業様のお話をよく伺います。

近年、一番の打撃が用紙の価格です。
原材料や物流コスト、原材料のチップや古紙、重油、薬品等の原燃料価格の高騰、円安などによる値上げ幅は10%を超え、これまでの値上げ分を含めると
30%を超えると思われます。
また、今後も値上がりが続く可能性があることもネックになっています。

ペーパーレス化の進行により、紙の需要は徐々に減っていますが、購買プロセスAISCEASなどのA、Attention(注意)のプロセスとなる「惹かれる」過程では、まだまだポスターやチラシ、販促物などの手軽に手に取ることができる紙ものが活躍しています。
遠い将来に、電子チラシなどが気軽に配布できるようになれば紙が不要になるのかもしれませんが、現状ではまだ紙も必要なシーンがあるため、用紙価格の高騰は切実な問題です。

デザインについても、近年はスマートな、スタイリッシュなデザインが多いように思います。
2000年代のCSRレポートの時代、モチーフが地球や緑などであった頃からみるとバラエティに富んでおり、その企業らしさを大事にしているように感じます。
今後、各企業報告書がどのように変化してゆくのか、楽しみです。

Sus&Us編集部

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