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持続可能な社会と直に触れあう
着るSDGs、エシカルファッションとは

エシカルファッションとは?

 ファッションの観点から、SDGsを意識する試みがあります。エシカルファッションはその代表的な言葉で、直訳すると“倫理的、道徳的なファッション”となります。すでに社会に浸透している言葉なので、実際に耳にしたことのある人、あるいは朧気ながらも人体や地球環境、動植物などに配慮された衣服という認識を持つ人は多いのではないでしょうか。

 しかし、言葉自体が有名になった一方で、エシカルファッションの具体的な定義を正確に把握している人は、そう多くないでしょう。その意味合いや示す範囲、関連する要素は多岐に亘り、非常にわかりにくいのが現状です。そこで、本記事ではエシカルファッションという言葉の内容を解説し、そこからSDGsとどのように結びつくのか、そして私たちはどのように付き合っていけばよいのかを解説したいと思います。

エシカルファッションの定義とは

 まず、エシカルファッションの具体的な定義・要件については、その世界的推進団体 The Ethical Fashion Forum が立ち上げたCommon Objective(共通の目標)プラットフォーム内で、「持続可能性の定義」として商業的・社会的・環境的の3つの側面から下記のように示しています:参照

●環境保護(Protecting the Environment)
●リサイクルと廃棄物への対応(Recycling & Waste)
●環境にやさしい素材(Environmentally Friendly Materials)
●公正な取引(Fair Trade)
●良識的な労働条件・労働環境(Decent Working Conditions)
●伝統技術のサポート(Support Traditional Skills)
●倫理的サプライヤーとの供給網の成立(Ethical Sourcing & Supply Chain Management)
●動物愛護(Animal Friendly)

さらに、これらの諸条件を細分化して見て行くと
・エネルギー問題に取り組む
・水の使用を最小限に抑える
・有毒な農薬や化学薬品の使用を是正すべく取り組む
・リサイクルやアップサイクルなどの循環アプローチを施して廃棄物を削減する
・安価で使い捨てられるファストファッションに反対する
・リサイクル繊維および代替繊維を使用する
・廃棄物から生成された繊維や持続可能な方法で生成された綿などを使用する
・公正な賃金や労働環境など、生産者の権利を守る
・手紡ぎ・手織り・仕上げなどの伝統的な技術の保護
・サプライヤーを調達する際のサプライヤーハンドブックに記載されている社会的、及び環境的基準に則って、供給網を作り上げる
・動物由来の材料の全部または一部の使用を避ける

といった具合になります。

そして、これらの条件を SDGsの17のゴール と照らし合わせれば、実に多くのゴールに合致します。

関係するSDGs

6:安全な水とトイレを世界中に
7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8:働きがいも経済成長も
9:産業と技術革新の基盤をつくろう
10:人や国の不平等をなくそう
12:つくる責任 つかう責任
15:陸の豊かさも守ろう
16:平和と公正をすべての人に

 直接的なものとしては上記のものが合致すると共に、労働条件による収入が「2:飢餓をゼロに」につながったり、廃棄された衣服の焼却が「13:気候変動に具体的な対策を」にもつながったりします。
 このように、今着ている衣服も世界の持続可能性と向き合うきっかけになるわけで、文字通りの意味合いで、SDGsと直に触れているといえるでしょう。

エシカルファッションはどうやって選べばよいの?

 では、実際にエシカルファッションを身に着けるにはどのように選べばよいのでしょうか。ポイントとなるのは2つのチェック項目、素材と製造過程の確認です。

【素材】
 エシカルファッションの概念が世界中で広まることにより、それにつながる認証マークも普及しています。例えば、日本オーガニックコットン協会が出す「GOTS」認証や、原材料に動物由来の成分や素材を含まない「ヴィーガン認証」があり、これらを一つの基準とすることができるでしょう。

 また、アップサイクル素材の価値が認識されるようになったおかげで、ファッションブランドや繊維メーカーもそうした素材を積極的にアピールしています。廃棄漁網、ゴムタイヤ、ビニール傘、廃棄衣類などさまざまな廃棄予定品が新しい衣服や鞄などへ生まれ変わっています。廃棄予定の食品をアップサイクルしたアップルレザー、バナナクロス、パイナップルリーフ繊維などもその代表例といえるでしょう。
 他にも、オーガニックコットンやリサイクルデニム、植物由来のインクなど、鍵となる素材を頭に入れておくことも有用です。

【製造過程】
 製造過程においても認証マークが頼りになります。NPO法人の「フェアトレードジャパン」が定めるフェアトレードマークは、労働者に適正賃金を支払うフェアトレードの実施を保証するマークです。また、ブランドが世界最大の労働・環境認定プログラム「WRAP」の認定工場で、製品を生産しているかを調べることで、製品の裏にある労働環境を窺い知ることが可能となります。

 製造過程における地球環境への配慮については、工場を動かす電源を再エネ由来のものにしているか、輸送時のパッケージがCO₂排出量の少ない素材でできているかといった点がチェックポイントとして機能します。
 さらに、間接的な要素とはなりますが、国内生産品は海外生産品と比較して輸送時のCO₂排出量が少なくなるため、エシカルの要素を持っています。予約販売による受注生産も、大量廃棄を予防できるため地球環境に配慮したファッションといえるでしょう。
 
 世の中に溢れるファッションの中からエシカルファッションを見出すことは骨が折れるでしょうが、お店で手に取った商品に認証マークが無いか、好きなブランドが労働環境や地球環境に配慮した活動を行っているか、という観点を持つことで比較的容易に識別が可能となるのです。

エシカルファッションとの向き合い方

 とはいえ、素材や製造過程へのこだわりと聞けば、エシカルファッションは高そうだと不安になる方もいるでしょう。実際、対となる存在のファストファッションに比べて、長く使いやすいものの、エシカルファッションの値段が高めなことは事実です。
 では、これから服を買うときは、人や地球環境へ配慮するために高級な商品を買うべきなのか、あるいはその選択肢をとらないことで罪悪感を抱かなければならないのか。もちろん、そのような苦しい思いをしてまでSDGsを意識する必要はありません。
 エシカルファッションは無理に購入するものではなく、あくまで買い物の判断材料の一つとすればよいはずです。元々好きだったファッションブランドの製品がエシカルファッションに該当すると分かれば、今までよりもそのブランドを好きになれるでしょう。買おうか悩んでいる服がエシカルファッションだったなら、購入の背中を押す材料にもなります。
 エシカルといえども、あくまでファッション。好きなデザインや装いに心を傾けたうえで、その要素をうまく自分の生活に落とし込み、ストレスなく持続可能な社会に協力していければよいと思います。



画像引用:GOTS - 日本オーガニックコットン協会HP(https://joca.gr.jp/certification/gots/

Sus&Us編集部

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