企業理念「環境との調和」に基づき、プラスチックの削減を目指し開発
自動車メーカーがエコな新素材を開発!スギ間伐材を使用した「TABWD(タブウッド)」の開発経緯
トヨタ車体は車両及び車両部品の開発~製造まで一貫して担う会社ですが、企業理念の「環境との調和」に基づく活動の一つとしてTABWD(タブウッド)を開発しました。 森の健やかな成長に欠かせない間伐ですが、現状は経済的な負荷等を理由に積極的に実施されていません。間伐をしないことにより、木々はお互いの成長を邪魔してしまうため、光が当たらず上手く成長しなくなってしまったり、形が悪くなってしまったりと品質の悪いものに育ってしまいます。
間伐材の付加価値を高めて活用することで、間伐を実施するきっかけになってほしいとの思いがあり、この課題の解決に有効と考え、TABWDの原料に間伐材を使用することを決意しました。
軽い・熱に強い・高強度の3つの特徴を持った「TABWD」
TABWDはスギ間伐材を補強繊維として利用し、樹脂と組み合わせた射出材料です。
一般的に自動車用樹脂部品には、熱可塑性樹脂の強度や耐熱性を高めるため、ガラス繊維などが補強材料として添加されますが、TABWDの場合は、その添加物をスギ間伐材の繊維に置き換えました。
また、スギの比重が小さいことで既存の射出材料に比べ軽量化を実現しました。
簡単にいうと、軽い・熱に強い・強度が高いという3つの特徴があります。
日本の森で生まれたスギの間伐材を使用したTABWDは、日本で多くのお客様にお使いいただいているトヨタ自動車のミニバン ノア、ヴォクシーの部品で2012年に初めて実用化することができました。
また、リサイクルしやすいという点もTABWDの大きな特徴です。木材繊維はしなやかで破砕されにくく、TABWDを使用、粉砕、再加工することでリサイクルを何度も繰り返すことができ、廃棄のゴミの量も減らすことが出来ます。
このことからTABWDは間伐による森の循環の促進と、プラスチック資源の循環をつなぎ合わせてカーボンニュートラルに貢献できると私たちは考えており、自然の恵みを皆様のもとへ届けるという意味で「森をはこぶ」というフレーズで表現しています。
CO2排出量を93%削減を実現する事例も!近年は自動車分野だけでなく、食器への採用などプラスチックの代用素材として幅広く展開
実際に車体の部品として使用した事例では、従来の石油由来の樹脂を主原料とした同重量の既存部品と比べてCO2排出量を削減できることが検証できています。間伐材と組み合わせる樹脂の種類をバイオ由来とすることでその効果は最大で93%と見積もられています。
また、TABWDは素材としてのカーボンニュートラルへの貢献だけでなく、この事例のように無塗装でも意匠表現を可能とすることで、自動車の製造工程におけるCO2排出量低減に貢献することができます。
さらに、自動車部品への採用はもちろん、最近では独特の風合いを活かした他分野での製品にも採用され、多方面での活用が期待されています。
直近では、隈研吾氏デザインの食器に採用され、2023年日本橋三越本店での販売も実施されました。
我々は20年以上、植物材料の開発に従事してきました。再生可能資源である植物を活用することで資源枯渇や環境負荷の問題を低減し、今後も安心してものづくりが続けられる社会の実現に貢献して参ります。
<参考>
隈研吾氏デザインの食器に採用:https://www.toyota-body.co.jp/ps/qnu/usr/db/d_file5-0001-0059.pdf
現在も様々なメーカー様よりお問い合わせをいただいており、TABWDを活用した商品を世に広め、森をはこんでいきたいと考えております。今後もトヨタ車体の企業理念「環境との調和」に基づき、地球環境保全に貢献して参ります。
トヨタ車体株式会社
自動車産業に求められる社会課題に主体的に取り組むため、トヨタ自動車のバン事業を担い、お客様に寄り添った魅力あるクルマづくりを企画・開発・生産まで一基通過で推進しております。さらに、福祉車両の企画・開発にも取り組み、すべてのお客様に「移動の自由」と「喜び」をお届けしています。
また、カーボンニュートラルをはじめとする地域環境保全に貢献できる製品開発とモノづくり技術革新に取り組み、各国・各地域での事業活動を通じて、調和のとれた持続可能な発展に寄与してまいります。
URL:https://www.toyota-body.co.jp/