プレスリリース集PRESS RELEASE

外部環境の湿度変化に応じて自発的に水分透過をコントロールする技術を開発

~環境と共生し、その恵みから美を生みだす技術第三弾~

 資生堂は、周囲の湿度変化に応答し、自発的に水分透過度合いをコントロールする新しい技術を開発しました。これまでに、周りの水分を取り込む/放出する性質(吸放水性)を有する素材は見出されていましたが、今回開発した技術は、湿度に合わせて素材の構造が変化することで水分の通りやすさを調節するという全く異なるメカニズムにより、幅広い湿度環境で長時間にわたり、肌に適切な潤いを保つことが期待されます。本研究成果の一部は「第32回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC※1)ロンドン大会2022」(2022/9/19-9/22)にて発表しました。
 本研究は、資生堂独自の R&D 理念『 DYNAMIC HARMONY 』の研究アプローチとして新たに設定した「 Human/Earth 」という観点で進めました。当社は、環境とのポジティブな共生から美を実現することを目指す「環境調和・共生技術」の開発に取り組んでいます。今後も、気候変動やライフスタイルの変化が顕著な現代社会において、お客さまが心地良さを感じ、健やかな肌を実現できるよう、研究を進めます。
※1 IFSCC: The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists
世界中の化粧品技術者が集い、より高機能で安全な化粧品技術の開発に向けて取り組む国際機関

急激な湿度変化による、肌へのダメージに着目

 肌のベタつきやカサつきは、外部の湿度環境の変化により影響を受けることがわかっています。また最近では、マスク着用の機会が増えたことにより、呼気によって高湿度になったマスクの中が、ニキビの原因となる雑菌が繁殖しやすい環境になることや、マスクを外す際には、肌の外側の湿度が急激に低下することにより、皮膚のバリア機能にも影響を与えると考えられています。本研究では、気候変動やマスク習慣が肌にもたらす湿度変化に着目し、外部環境の湿度変化に反応して自発的に水分透過をコントロールする技術の開発を目指しました。

「水分透過コントロール」技術の開発

 今回、化粧品原料を中心にさまざまな素材を探索し、外部環境の 湿度変化に反応し、自発的に肌から蒸散する水分透過をコントロールする技術の開発に取り組みました。これまでにも外部環境の変化を受けて水分透過性が変動する素材は見出されていますが、一般的には、素材自体が高湿度で水を貯めこみ、低湿度で吐き出す性質(吸放水性)を利用しています。一方、今回新たに開発した「水分透過コントロール」技術は、外部の湿度に応じて素材が作る膜の構造が変化することで、肌から蒸散する水分の透過度合いを自発的に調整します。湿度が上がるにつれて、素材中で水の通り道を狭める結晶性※2 が低下することを確認しています(図 3)。このため、高湿度では肌からの水分蒸散を妨げず、低湿度では肌に水分を閉じ込めることが期待できます(図 1,2 )。
また、従来技術と比較して、素材自体の吸放水性に頼らないため、水の容量制限がないことから、時間が経過してもこの機能が持続します。
※2 結晶性:素材中の構成成分の規則的な並び方の程度を示し、一般的に結晶性が高いほど水蒸気などの気体透過性が低くなります。

 本技術を応用することで、外部環境の変化や、マスクの着脱時に起こるような急激な湿度環境変化により、肌が受けるダメージを抑えることが期待されます。今後は、「水分透過コントロール」技術を、スキンケア、メイクアップなど、さまざまな商品・サービスに応用していきます。また、今後も過酷な自然環境下においても、人々が環境とポジティブに調和・共生していくために、さらに多様な自然環境中の要素を美の力に変える革新的な「環境調和・共生技術」の開発に挑み続けます。

参考:資生堂が取り組む「環境調和・共生技術」

 資生堂は、「環境とポジティブに調和・共生し、美を生み出す」ことを目指して、変化が著しい外的環境のさまざまな要素を美の力に変えていく、「環境調和・共生技術」の開発に取り組んでいます。2021年には第 1 弾として「紫外線」※2 、今年 5 月には第 2 弾として「乾燥(低温・低湿度)」※3 に着目した技術を発表しました。
※2 資生堂、紫外線を肌に良い作用をもたらす光へと変換する革新技術を開発(2021)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003256
※3 資生堂、乾燥環境に対する肌本来の適応メカニズムを解明(2022)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003402&rt_pr=trl21

R&D理念「 DYNAMIC HARMONY 」とは
・資生堂、独自のR&D 理念「 DYNAMIC HARMONY 」を制定(2021 年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003252
・「DYNAMIC HARMONY 」特設ページ
https://corp.shiseido com/jp /rd/

<参考情報> 研究員たちの挑戦

■環境共生の観点から、異分野の技術を探索
 これまで着目されてきた季節変化による湿度変化だけではなく、近年の気候変動や生活環境の変化などに伴い、朝昼夜の湿度変化、屋内・屋外、さらにマスクの着用など、人の肌はより多くの湿度変化にさらされるようになってきています。
 そこで、まずは理想的な化粧膜の機能として、「低湿度では水分を肌に閉じ込める効果が高く、肌の潤いを逃がさないが、高湿度では水分の蒸散を妨げない状態」を目指しました。こうした状態を実現できる技術を、化粧品にとどまらず様々な分野で探索したところ、日本の伝統的な家屋では、漆喰や土壁のように、外気変化に応じて屋内の湿度を自動的にコントロールする、まさに「環境と調和・共生する」建築技術が活用されていることや、現代建築技術の分野でも、夏は部屋の中を蒸れさせず、冬は部屋の湿度を保つ、透湿制御という技術が活用されていることを知りました。そこで、化粧品に活用できる塗布可能な素材で、この透湿制御が実現できないか検討を進めました。

■さらなる環境との調和・共生に向けて
 今回、Human/Earthという新たな DYNAMIC HARMONY アプローチを設定し、地球環境とのポジティブな調和・共生を実現することのできる技術の開発を進めました。今後も、紫外線、湿度、温度以外の環境要素への着目も進め、過酷になりうる環境下でも、人々が恐れずポジティブに暮らすために、革新的なイノベーション開発に取り組みます。

株式会社資生堂

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