日本のエネルギー政策の核となる『S+3E』について知っておこう

生活に欠かせない電気やガス。料金の高騰や環境負荷とエネルギーを取り巻く課題は山積みですが、そんな事態を受けて、政府も再生可能エネルギーの導入や省エネ技術の推進に取り組んでいます。
そんな日本のエネルギー政策を進める上で、欠かせない枠組みとなっている「S+3E」というものをご存知でしょうか。
今回は「S+3E」とは何か、それによって日本のエネルギー政策がどう成り立っているのかを見ていきましょう。
「S+3E」とは
「S+3E」とはどういうものなのでしょうか。
S+3Eとは、安全性(Safety)を前提として、自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に実現する日本のエネルギー政策の基本方針です。
それぞれ、背景にはエネルギー危機に対応しつつ、持続可能な社会への目的があります。
・Safety(安全性)
S+3Eの大前提となる「Safety(安全性)」は、自然災害やテロ、事故リスクへの対応を含め、原子力発電や再生可能エネルギーへの安全性の課題を盤石にするという意味を持ちます。
3年ごとに策定されている日本のエネルギー政策計画である「エネルギー基本計画」でも、2011年の福島原子力発電所の事故から「エネルギーの安全性」について検証を重ねており、今後の日本のエネルギー問題を語る上で、欠かせない要素になっています。
参考:経済産業省「エネルギー基本計画の概要」
・自給率(Energy Security)
現状、日本はエネルギー自給率が2021年度時点で13.3%(主要国の一次エネルギー自給率では37位)と、他のOECD諸国と比較すると低い状況です。
特に、近年ではロシアとウクライナの武力衝突によって化石燃料の輸入が問題になっている背景もありますが、なるべくひとつの国や地域からの輸入に依存せず、様々な国から輸入できるように供給を多様化し、エネルギーそのものも一つのエネルギーに依存せず、多種多様なエネルギーを利用する(エネルギーミックス)、という指針です。
また、エネルギー自給率を高めて、安定してエネルギーを供給し、自然災害に強いシステムを構築し、前提となる安全性を確保した上で安定供給を目指す(スマートグリッド等)ことも重要です。
参考:日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
・経済効率性(Economic Efficiency)
エネルギーコストと家庭や企業への影響をなるべく軽減し、再生可能エネルギー導入によって費用を抑え、エネルギーを手軽に利用できるようにする、という指針です。
新型コロナウイルスの流行や世界情勢でエネルギー需要が逼迫し、ガス代や電気代は年々上がってきています。そんな事態に対抗するべく、エネルギー効率を向上したり、再生可能エネルギー導入を進めるべく「再エネ賦課金」を徴収したりしていますが、それによってさらに家計に影響を与えてしまっているのも課題になっています。
・環境適合(Environment)
環境に良いエネルギー運用を目指す指針です。日本も兼ねてから打ち出している「カーボンニュートラル」に基づく脱炭素社会実現に向けた取り組みや、再生可能エネルギーの開発もこれらに含まれます。
「エネルギー基本計画」においても、カーボンニュートラルへの取り組みは定期的に提唱されており、近年では水素やアンモニアを使用した火力発電に着目し、研究が進められています。
「S+3E」の課題
S+3Eは持続可能なエネルギー社会を実現するためには大切な要素ですが、同時に課題も抱えています。
一番の課題は「各要素間の衝突」です。
例えば、安全性を確保しつつエネルギー開発を進めるためには、時間と資金がどうしても必要になりますが、そうすると今度は経済性が落ち込み、安い燃料でエネルギー開発を進めようとすると環境への適合性が下がり…というように、各要素はそれぞれ対立してしまう要素でもあります。
各要素のバランスを考慮しながらエネルギー政策を進めていくことが、今の大きな課題となっています。
まとめ
今回は「S+3E」について紹介させていただきました。
少し難しい概念ですが、日本のエネルギーの未来を考える上では大切な要素です。
「S+3E」という枠組みを通じて、家庭や職場でエネルギーを効率的に使う方法を考えることが、持続可能な社会への第一歩と言えるかもしれません。
【参考資料】S+3Eについて学べるサイト
・経済産業省 資源エネルギー庁HP
https://www.enecho.meti.go.jp/
・エネルギー視点で未来を考えるメディア「EMIRA」(東京電力運営)
https://emira-t.jp/
・Green&Circular 脱炭素ソリューション(三井物産運営)
https://www.mitsui.com/solution/
Sus&Us編集部