GX(グリーントランスフォーメーション)について知ろう
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、CO2排出量削減と産業競争力向上の両立をめざし、クリーンエネルギーを主軸とする産業構造・社会システムへの変革を図る取り組みのことです。
2020年10月、当時の菅首相が所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする、カーボンニュートラルの実現を宣言しました。宣言に基づき2020年12月、経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」をまとめ、14の重点分野における実行計画を掲げました。
2022年には、岸田内閣が「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を閣議決定。GXを重要投資分野と位置づけ、今後10年間に官民協調で150兆円規模の投資実現をめざしています。
世界にひろがるカーボンニュートラルと日本のGX
近年、カーボンニュートラルを表明する国が急増しています。
COP26が終了した2021年11月時点で、154カ国・1地域が、2050年等の年限を区切ったカーボンニュートラルの実現を表明。EUや米国、英国などでは、日本と同様に2050年のカーボンニュートラルをめざしています。
各国は、EUが官民あわせて約120兆円のグリーンディール投資計画、英国はグリーン分野に政府支出約1.7兆円および民間投資誘発約5.8兆円、米国は約220兆円をグリーン分野のインフラ・研究開発等に投資などの政策を発表しています。
一方、日本はGXが企業や国家の成長と競争力に必要不可欠なものであるとの認識から、グリーン成長戦略が経済と環境の好循環を実現させるとして、2023年から「GX経済移行債(脱炭素成長型経済構造移行債)」を発行するとしています。これは、2023年2月に閣議決定された「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」に基づくもので、同時に「GX実現に向けた基本方針」も取り決められました。
これにより、①エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXに向けた脱炭素の取組②「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行が図られることになります。
①については、製造業の構造転換などによる徹底した省エネの推進、再生可能エネルギーの主力電源化、原子力の活用、水素・アンモニアの導入促進、カーボンニュートラルの実現に向けた電力・ガス市場の整備、資源確保に向けた資源外交など国の関与の強化、蓄電池産業、資源循環、運輸部門のGX、脱炭素目的のデジタル投資、住宅・建築物、インフラ、カーボンリサイクル/CCS、食料・農林水産業など、全方位にわたっています。
②の「成長志向型カーボンプライシング構想」は、GXに先行して取り組む事業者にインセンティブが付与される仕組みの創設のことで、炭素に対する賦課金や排出量取引制度が導入される予定です。
GXリーグについて
2022年2月に経済産業省が発表した「GXリーグ基本構想」は、GXに積極的に取り組む企業が官公庁・大学と協働する場として考えられたものです。そこで、経済・社会システムの変革に向けた議論や、新たな市場の創造とその実践を行うとしています。
その目的は、①企業の自発的・能動的な未来社会への行動を促し、その企業の集合体がリーダーシップを発揮すること②GXに自発的に取り組みCO2排出削減に貢献した企業が外部から正当に評価され、成長できる社会づくり③GX投資が金融市場や労働市場、市民社会から支持される仕組みづくりです。
そのため、GXリーグでは、下記の3つの場を提供するとしています。
1. 2050年カーボンニュートラルのサステイナブルな未来像を議論・創造する場
2. カーボンニュートラル時代の市場創造やルールメイキングを議論する場
3. カーボンニュートラルに向けて掲げた目標に向けて 自主的な排出量取引を行う場
2023年4月から本格的に稼働し、参画企業は各業界の著名な企業も含め、約680社となっています。
また、その活動報告は、noteに公開されています。
Web「GXリーグ」
note「GXリーグ2023」
本格的な活動はこれからとなりますが、GXによるカーボンニュートラルと、産業構造や社会システムが変革する未来が楽しみです。
まとめ
世界中が持続可能な地球のためにカーボンニュートラルを推進するなか、エネルギー資源の乏しい日本は、カーボンニュートラルをGXという社会改革による経済発展によって達成しようとしています。
それ自体は歓迎すべきことと思いますが、さまざまな形で資金が集められ、新たな組織によって政策が実行されても、目的を達しないままということが近年多いように見受けられるため、その行方は国民がしっかり監視する必要がありそうです。
※参照
資源エネルギー庁〉当庁について〉エネルギー白書〉エネルギー白書2022〉第1節 脱炭素を巡る世界の動向
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/html/1-2-1.html#n1
Sus&Us編集部