CO₂削減量をお金で買う? カーボンクレジットを取り巻く世界の動きについて前編:COP26から27にかけて評価を浴びた、日本のJCMとは
COP26では、カーボンクレジットに関して日本が注目を浴びた
2021年11月にパリで開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は、世界の脱炭素推進に大きな成果をもたらしました。しかしこの会議、こと日本に限っては、あまり目立てなかった会議でもあります。それどころか、石炭発電の廃止に対して後ろ向きだったことを理由に、脱炭素化が芳しくない国に贈られる不名誉な称号「化石賞」を受賞し、多くのメディアに取り上げられました。
そうした中、日本がよい意味で目立った事柄がありました。それは、カーボンクレジット、つまりGHG(温室効果ガス)の排出量取引に関する国際ルールについてです。
(COPについて: 参考記事 )
世界にも有意と認められた日本のJCM
排出量取引とは、CO₂の排出枠を「クレジット」として市場で取引する仕組みのこと。より平たく言えば、お金を払ってCO₂を排出できるようにする取引です。国際間での排出量取引は、再エネや省エネといった排出削減活動や植林などの吸収活動が行われた国から、その成果(排出枠)をクレジットとして他の締約国に移転し、クレジットを購入した国はそれを自国の排出削減目標の達成に計上する流れとなります。
このクレジットを取引する市場の形成については2007年のCOP13以降、国際交渉の場で議論されてきましたが、COP21で「パリ協定第6条」にまとめられました。そして、先のCOP26においてその実施方針が採択されたのですが、その中の協力的アプローチの代表例として、日本が提案・実施してきた「二国間クレジット制度(以下、JCM)」が注目を浴びたのです。
JCMは、途上国・新興国に対して、優れた脱炭素技術等の普及や対策を実施することでGHGの削減に取り組み、その削減の成果を両国で分け合う制度です。日本は、2011年からJCMに関する協議を行っており、2022年11月時点で25か国とパートナーシップを構築してきました。
二重計上を防ぎ、正確な削減量を導く仕組みがJCMの強み
JCMがパリ協定の中で注目を浴びたのは、これが二重計上の合意において非常に有用なシステムと見なされたからです。ここで言う二重計上とは、排出量削減を達成した成果を、クレジットを受け取った先進国側だけでなく、途上国側にも計上することを指します。この二重計上を許せば、実際より多くの排出量が削減されたことになるため、支援する先進国、される途上国の双方で、削減効果を分け合う仕組みづくりが必要とされてきました。
JCMは、低炭素・脱炭素技術の普及と共に、それによる排出量削減を適切に評価する仕組みとして推進されてきた経緯もあり、この二重計上を防ぐのに好適と見なされたのです。そして、先述のようにパリ協定第6条にもその要素がまとめられることとなりました。その意義は大きく、COP26の終了後には、「我が国が打開策の一つとして提案していた内容がルールに盛り込まれ、合意に大きく貢献した。」と外務省ホームページでも記載されたほどです(外務省HP)。
またそれを受けて、昨年開催されたCOP27においては、日本はJCM促進につながる「パリ協定6条実施パートナーシップ」立ち上げに貢献しました。
なお、JCMはパリ協定第6条の内、第2項「協力的アプローチ」の内容に含まれています。さらに細分化して見ていくと、JCMは同条2項にある「国際的に移転される緩和の成果」通称“ITMOs”の活用を含むものとして位置づけられているのです。
このJCMとITMOsの関係性をはじめ、カーボンクレジット周りの用語は非常にややこしく、複雑な関係性となっています。後編では各用語を解説しつつ、その仕組みを詳しく説明いたします。
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Sus&Us編集部