MSCはブルーフード・アセスメントの調査報告を歓迎し、国際社会によるさらなる行動を求めます

世界で最も普及している持続可能な漁業の認証制度を管理・推進する国際非営利団体MSC(海洋管理協議会)は、持続可能な食料システムを構築するための国際共同プロジェクトであるブルーフード・アセスメント(BFA)が9月15日に発表した報告書について、将来の世代が「ブルーフード(魚介類や藻類)革命」による便益を受けるために今すぐ行動を起こさなければならないと政策立案者に対して強く訴えるメッセージであると評価します。

この報告書には、気候変動、持続可能な開発、栄養不良といった複合的な課題に対処するためにブルーフードが果たす役割についての、非常に包括的な検証が記載されています。ブルーフードの世界的な需要は2050年までに約2倍になるとされており、持続可能な海洋資源のための管理は、人と地球の両方にとってのメリットとなります。

BFAの報告書で強調されているように、水産養殖はますます重要な役割を果たすようになってきていますが、増加していく人口に食料を供給するためには、世界の天然漁業の持続可能な管理も大変重要です。天然漁業は陸地における動物性タンパク質の生産に比べ、環境負荷を低減する機会にもなります。

ある調査によると、すべての天然漁業が持続可能な方法によって行われた場合、年間の漁獲量は1,600万トン増加するとされており[1]、MSC独自の分析では、世界の7,200万人以上の人々のタンパク質需要をこれで補うことができるとしています[2]。適切な漁業管理の重要性は、数種のマグロ・カツオ類[3]、マジェランアイナメ[4]、アイスランドのタイセイヨウマダラ[5]、カンタブリア海のカタクチイワシ[6]を含む水産資源の回復によって実証されています。

しかし、世界的に見ると、過剰漁獲の割合は年々増加しており、現在では水産資源の34%もが持続可能な限界を超えて漁獲されています[7]。また気候変動は、世界で最も優れた管理を行なっている漁業にも新たな課題をもたらしています。多くの政府は、資源が自国の管理する海域を越えて移動している中にあって、どのように漁獲枠を割り当て、過剰漁獲を防ぐかについて、合意に至ることが難しい状況になっています。北東大西洋のサバ、ニシン、ブルーホワイティングのMSC漁業認証が最近一時停止されたことは、これを端的に示すものです[8、9]。

MSCの北欧地域ディレクターであるエリン・プリドルは次のように述べています。
「ブルーフード・アセスメントの報告書は、増加する世界の人口への食料供給について、養殖と天然の双方においてブルーフードが持つ大きな可能性を示すものです。しかし、ブルーフードの生産量の増加は、持続可能で適切な管理に基づくことが重要なのです。
SDGs(国連の「持続可能な開発目標」)の達成期限まであと9年となった今こそ、政策立案者が行動を起こすべき時です。気候変動、人口の増加、過剰漁獲は、将来における水産資源の健全性と、それに依存する何十億もの人々を脅かす最悪の事態を引き起こしています。各国の政府には、国民の代表として、現在そして将来の世代のために海を守っていく責任があります。しかし、重要な科学的根拠のある限界基準に則った水産資源の割当について、各国政府が合意に至らないため、国際的な漁業の管理にひずみが生じています。何十億もの人々の生活を支えてくれる海の恩恵を享受しつつ、その豊かな生物多様性を守っていくことができるのは、科学的根拠に則って行動することであることがこれまでの経験から明らかです。手遅れになる前に今すぐ行動を起こさなければなりません」

参考文献:

[1] PNAS 「対照的な管理体制下における世界の漁業の見通し」(英語)
https://www.pnas.org/content/113/18/5125

[2] MSCプレスリリース 「過剰漁獲により失われた栄養源は7,200万人分 世界の食糧供給の増加には、持続可能な漁業が不可欠です」
https://www.msc.org/jp/whatyoucandoJP/media-centre/press-releases/210127

[3] IUCN 「海洋生物への圧力の高まりにもかかわらず、マグロ・カツオ類資源は回復している」(英語)
https://www.iucn.org/news/species/202109/tuna-species-recovering-despite-growing-pressures-marine-life-iucn-red-list

[4] MSC 「チリ産のシーバス:マジェランアイナメ資源はいかにして回復したのか」(英語)
http://patagonian-toothfish-story.msc.org/

[5] MSC 「オリンピックで採用された持続可能な漁業の取組み」
https://iceland-olympic-fishing-jp.msc.org/

[6] MSC 「カンタブリア海のカタクチイワシ」(英語)
http://cantabrian-stories.msc.org/

[7] 現在、水産資源の3分の1以上が過剰漁獲されているのに対し、1974年に過剰漁獲されていた割合は10%でした。国連食糧農業機関(FAO)発行「世界漁業・養殖業白書 2020年版」(英語)
http://www.fao.org/publications/sofia/2020/en/

[8] MSCプレスリリース 「北東大西洋のすべてのサバ漁業に対するMSC漁業認証が一時停止」(英語)
https://www.msc.org/media-centre/press-releases/press-release/msc-certificates-suspended-for-all-north-east-atlantic-mackerel-fisheries

[9] MSC 「ニシンとブルーホワイティングの資源について国際的な行動が必要」(英語)
https://www.msc.org/media-centre/news-opinion/news/2020/12/04/international-action-needed-on-herring-and-blue-whiting-stocks

ブルーフード・アセスメントについて

ブルーフード・アセスメント(BFA)は、25以上の機関から100名を超える科学者たちが参加する国際共同プロジェクトです。ストックホルム大学ストックホルム・レジリエンス・センター、スタンフォード大学、および非営利団体のEATが中心となり、健康的で公平で持続可能な食料システムを構築するために意思決定者が得失評価を分析し、解決策を実行できるように支援を行っています。

MSC(海洋管理協議会)について

将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際非営利団体です。本部をロンドンとし1997年に設立され、現在は約20カ国に事務所をおき世界中で活動しています。MSCジャパンは2007年に設立。MSC「海のエコラベル」の付いた水産品は世界約100カ国で47,000品目以上、日本では約900品目が承認・登録されており、イオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、西友、ライフ、マクドナルドなどで販売されています。
持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC漁業認証規格は、世界で広く認知されており、最新かつ確実な科学的根拠に基づき策定されたものです。漁業がこの規格を満たすためには、(1)水産資源が持続可能なレベルにあり、(2)漁業による環境への負荷が抑えられており、(3)長期的な持続可能性を確実なものにする管理システムが機能していることを、独立した審査機関による審査を通じて実証することが求められます。

詳しくはMSCウェブサイトをご覧ください:https://www.msc.org/jp

MSC「海のエコラベル」について

MSCの厳格な規格に適合した漁業で獲られた水産物にのみ認められる証、それが「海のエコラベル」です。