誰もが楽器を楽しめる社会を目指して
持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて多くの企業が様々な取り組みを行っています。
目標の1つとして「すべての人に健康と福祉を」が掲げられていますが、身体の健康はもちろんのこと、心が健康であることも大切です。
そこで欠かせないのが音楽。紀元前から「音楽療法」が行われていたといわれているように、音楽にはリラクゼーションの効果や脳の活性化、コミュニケーションの促進など様々な効果があげられます。
そして音楽は子どもからお年寄り、人種や言葉を超えて誰もが楽しめることも特徴です。
とはいえ、障がいがある方にとってはそうはいかないことがあることも事実。
ダイバーシティ(多様性)を認め合う時代にあって、誰もが音楽を楽しみ、心が豊かである社会へ。
本記事では、その一助とするために開発された「誰でも楽しめる楽器」を紹介します。
だれでもピアノ
楽器の代表ともいえる「ピアノ」は両手でけん盤を弾き、足でペダルを踏むことで演奏をします。
ピアノといえばYAMAHA。日本を代表するピアノブランドです。
100年以上の歴史を持つYAMAHAは、手や足に障がいがある人でも演奏をすることができないかという発想から「だれでもピアノ」を開発しました。
指一本でも演奏ができるように、自動演奏システムを活用して不足している音を補うことで、思い通りの演奏を実現することに成功しました。さらに、楽器が手元になくてもタブレット端末などを通じて世界中の誰もがだれでもピアノにアクセスできる専用アプリの開発も進んでいるそうです。
「だれでもピアノ」は、障がいのある人だけでなく、「ピアノが弾けない人」も含めて誰もが演奏の喜びを体験することができる取り組みです。
ヘルマンハープ
オーケストラで一際美しい音色を醸し出す「ハープ」は、楽器にあまり詳しくない人も
あの楽器!とイメージが湧くのではないでしょうか?
しかし、楽器自体が大きく、高価なため実際に購入されたことがある方は少ないでしょう。
そのため「触ったことはないけど、難しいでしょ」と思っている方が多いはず。
そもそも楽譜が読めなければ始められない。
そんなハードルの高さを解消してくれるのが、「ヘルマンハープ」です。
1987年にドイツの農場主ヘルマン・フェー氏が、ダウン症の息子のために開発。
2004年には、日本に上陸。
その特徴は、楽譜が読めなくても演奏ができること。専用の楽譜は音符を示す白い玉や黒い玉が線でつながれた星座のような形になっており、これを弦とハープ本体の間に差し込むと弦の真下に音符が現れます。この白い玉、黒い玉がある場所の弦を順番にはじくだけでメロディーを奏でられるという仕組みです
ダウン症の息子に「自分で演奏することができる楽器を作りたい」とのヘルマン氏の思いは、今では海を渡り、ハンデがある、なしにかかわらず小さなお子様の保育、高齢者の認知症予防にも役立てられています。
ブンネ楽器
福祉大国、スウェーデンで誕生し35年以上の歴史をもつ「ブンネ・ミュージック」。
そこで生み出された「ブンネ楽器」は年齢やハンデの有無にかかわらず、全ての人が音楽を楽しめるように作られました。
初めて楽器を手にした人が直面する最大の問題。それは「どうやって使うのか」ではないでしょうか。
ギターのコード、楽譜の読み方、基本を習得する前に挫折をしてしまったという話も珍しくありません。
小さなお子さんや高齢者、ハンデがある方ならなおさらです。
ブンネ楽器は幅広い方に操作しやすい形状で、色を用いた直感的にわかりやすい楽譜を使用します。
楽器には4種類あり、「楽器は弾けないけど演奏してみたい」という思いに応えてくれます。
●スウィングバー・ギター
誰でも簡単にコード(和音)が演奏できる4弦のギター
●ミニベース
一般的なベースと異なり1本の弦で演奏できるベース
●単音フルート
1本で1つの音が出るようになっているフルート。各音を一人が担当して演奏を楽しむ
●チャイムバー
鉄琴のような楽器で、音板が広く叩きやすい
メロディーを奏でるには技術が必要。そんな概念を変えるのがブンネ楽器です。
「そんなに簡単だと、子どものおもちゃみたい」と思われる方もいるかもしれませんが、使われている弦や音管はギターの弦、パイプオルガンの音管などを用いた本格仕様です。
だれでも楽しめるユニバーサル楽器として、親しまれています。
まとめ
今回は三つの事例を取り上げました。かの有名な作曲家ヨハン・ゼバスティアン・バッハは「音楽は共通言語であり、翻訳する必要がない。魂が魂に話しかけるのだ」という名言を残しています。
国境を越えて親しまれる音楽は、言葉もハンデも越えるコミュニケーションツールなのですね。
【参考】
YAMAHA ピアノを奏でる喜びを全ての人に
「だれでもピアノ®」が拓くインクルーシブな未来
日本ヘルマンハープ公式サイト
ブンネ楽器
Sus&Us編集部