記事・コラムTOPICS

【取材レポート】SDGs未来都市・相模原市のサステナブルな取り組みを体験!②
~最先端の食品ロス対策~

サスアス編集部は、全国でも有数のSDGs先進都市として知られる神奈川県相模原市の「『SDGs未来都市 相模原』を体感するプレスツアー」に参加してきました。

3回にわたりその模様をお届けしている本連載の第2回では、食品ロスに対する日本でも有数の取り組みをご紹介します。

【レポート内容(全3回)】
第1回:相模原市南清掃工場
 相模原市のSDGsへの取り組み概要、ごみの資源化・原料化
第2回:日本フードエコロジーセンター・さがみはらバイオガスパワー、火焔山餃子房(今回)
 食品ロスに対する最先端の取り組み
第3回:さがみこベリーガーデン
 太陽光発電を活用した未来の農業

まだ食べられる食品廃棄物を豚のエサに再利用

神奈川県相模原市に本社・工場を構える日本フードエコロジーセンターは、毎日大量に破棄される食品を、養豚のための飼料に加工する事業を行っています。

その加工の現場をご案内いただくと…パンや麺、ご飯、野菜、煮干しに餃子の皮などの食品がずらりと並んでいます。食品ロスについて耳にする機会も多くなっていますが、実際に目にするとそのインパクトは小さくありません。


こうした食品廃棄物を集めて豚のエサにする。いわば食品のリサイクルを行っているのですが、もちろん食品廃棄物をそのままエサにすればよいというわけではありません。栄養バランスに配慮し、腐敗しにくいように加工する必要があります。

そのための方法には「乾燥化」がありますが、コストがかかりすぎるという問題があります。しかし生のままでは保存が利かない…。
そこで同社が導入したのが「発酵」。さまざまな食材をバランスよく混ぜ合わせて液状にし、発酵させることで「栄養」と「コスト」と「保存性」の問題をすべて解決した独自のリキッド発酵飼料の開発に成功したのです。


食品廃棄物は手作業で包装から開封し、異物の除去を行った上で破砕し、おかゆ状にします。殺菌処理を施し、冷却・発酵して飼料が出来上がります。

食品ロスに新たな価値を

日本フードエコロジーセンターでは、コンビニやスーパー、食品工場で廃棄された食材を1日40トン受け入れています。コンビニやスーパーは1年中稼働しているため、受け入れもそれに合わせて年中無休だそうです。

なお、豚が安全に食べられるように食べ残しや油分・塩分の強すぎる食品は飼料には用いないということです。ただし、後述するようにそうした飼料に向かない食品廃棄物も、電力や肥料へのリサイクルを進めています。

こうして毎日4,500頭の1日分に相当する45トンのリキッド発酵飼料を供給。このエサで育った豚は「優とん」としてブランド化し、大手食品スーパー等で販売、好評を博しています。優とんは一般の豚に比べ健康に有用なオレイン酸を多く含んでおり、実際に筆者も頂きましたが、非常に柔らかく甘みを感じました。それだけ豚の健康に配慮して作られた飼料であることが伺われます。

「優とん」について詳しくはこちら

食品ロス問題とは

ここで改めて、同社の事業背景となる食品ロスについて確認しておきましょう。

食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことをいいます。
日本における食品ロスの量は年間472万トンで、1人当たりにすると1年で約38kgに相当します(農林水産省「令和4年度の事業系食品ロス量が削減目標を達成!」)より。

472万トンの内訳は、食品メーカーや小売店での規格外品や売れ残り、飲食店での食べ残しなど「事業系食品ロス」が236万トン、各家庭での食べ残しなど「家庭系食品ロス」が236万トンとなっています。

第1回で触れたように、日本におけるごみ処理費用は2兆1,519億円(2022年度)かかっています。焼却炉で燃やされるごみの約4割が食品と言われていますので、年間8,500億円ほどが食品を燃やすために使われていることになります。

もちろんそれは税金により賄われていますので、われわれ全員が負担していることになります。大量に廃棄された恵方巻を燃やすために、われわれはお金を払っているのです。

飼料自給率への貢献

食品を捨てるのにコストがかかる一方、食品をつくるのにも当然コストがかかります。

豚の育成コストは1頭当たり4万3,540円(2022年)で、そのうち飼料費は2万9,315円と約67%を占めます(農林水産省「令和4年 肥育豚生産費」より)。


飼料は海外からの輸入に頼っており、飼料自給率は全体で26%にとどまっています(農林水産省「飼料自給率の現状と目標」より)。

そして、この輸入飼料の価格が近年高騰しているのです。主原料であるとうもろこしの価格がウクライナ情勢などの影響を受けて上昇し、ここ数年で2倍ほどに。畜産農家へのダメージは非常に大きいものとなっています。実際に廃業に追い込まれる畜産農家も出てきており、これが続くと当然食肉を輸入に頼ることになり、食料自給率は低下することになります。


こうした状況を受け、国は2030年までに飼料自給率を34%に引き上げる目標を掲げています。
そのための方策として注目を浴びているのが「エコフィード」という考え方。環境に優しい(ecological)、節約する(economical)の「エコ」と飼料(feed)の「フィード」を併せた造語で、食品廃棄物を利用して作られた飼料のことをいいます。

まさにエコフィードの好例が、日本フードエコロジーセンターのリキッド発酵飼料です。食品廃棄物のリサイクルは飼料自給率の向上と養豚事業者のコストダウンにも貢献しているのです。

食品ロスのカスケード利用

前述したように、すべての食品廃棄物をリキッド発酵飼料へと生まれ変わらせることはできません。
そこで日本フードエコロジーセンターが2023年から取り組みを始めたのが、食品廃棄物を①リキッド発酵飼料、②電気、③肥料に変えるという多段的(カスケード)なリサイクル手法です。

そのために設立した会社・施設が「さがみはらバイオガスパワー株式会社」で、日本フードエコロジーセンターの目の前に位置しています。

こちらでは、惣菜やコーヒーかす、揚げかす、ドレッシング、マヨネーズといった飼料化に向かない食品廃棄物をバイオガス発電に利用することができます。1日50トンの食品廃棄物で528kW(一般家庭約1,000戸分の電力相当)の電力を生み出し、電力会社へと売却しているそうです。

さらに、電力化への過程で生まれた消化液は固液分離後、廃熱等で乾燥して肥料をつくることもできます。

これにより、食品廃棄物を余すことなく再利用することができるのです。

食品ロスの最前線を知る

日本フードエコロジーセンターは食品ロスという社会課題に対し、ビジネスモデルを確立したという点でも注目される企業です。食品関連事業者からは食品廃棄物を受け入れる際の処理費用収入、養豚事業者からは飼料販売収入、電力会社から売電収入を得ることで、継続性の高い雇用を確保しています。
受け入れた食品の開封など一部の作業については近隣の就労支援施設と提携し、地域の障害者雇用にもつなげているそうです。

今回ご案内いただいた株式会社日本フードエコロジーセンター代表取締役の髙橋巧一さん(下記写真)は、今後は地方の耕作放棄地などの社会課題にも目を向け、これまで培った食料やエネルギーのリサイクルのノウハウを農業に結びつけ、地域で循環させていく「サステナブル・ファーム構想」も描いていると言います。

日本の食品ロス、ひいてはSDGsを牽引する日本フードエコロジーセンターの取り組みには引き続き要注目です。


なお、日本フードエコロジーセンターでは工場見学を行っています。
◯内容
工場概要の説明、作業風景見学、質疑応答
◯所要時間
1時間~1時間半
◯見学料(一人当たり)
学生(小学生~大学生):500円
一般:1,000円
◯定員
30名

お申し込みはこちらから行えますので、ぜひ見学してみてください。

【株式会社日本フードエコロジーセンター】
所在地:神奈川県相模原市中央区田名塩田一丁目17番13号(地図はこちら
電話番号:042-777-6316
HP:https://japan-fec.co.jp/

地産地消で頂く昼食

続いて訪れた焼き肉✕中華レストラン「火焔山餃子房」では、すべて相模原市にちなんだ食材を使用したという昼食を頂きました。その中には「優とん」を使った生姜焼きも。現時点では通常メニューにはなっていないそうですが、今後メニュー化に向けて動いているとのことで期待大です!


同店はさがみはらSDGsパートナーに登録しています。
食品ロスを減らすための少量での仕入れや、その日の在庫状況に応じたメニューの提供、地産地消の推進などを行うほか、地域のイベントへの参画や出産・育児等も踏まえた従業員の多様な働き方の推進など、SDGsへの取り組みを積極的に進めているそうです。

【火焔山餃子房 田名塩田店】
住所:〒252-0245 神奈川県相模原市中央区田名塩田2丁目8-8(地図はこちら
電話:042-711-9211
定休:なし
営業時間:11:00~22:00
席数:60席(オープンテラス有、ペット可)
駐車場:あり
HP:https://kaenzan.com/tanashiota/

Sus&Us編集部

この記事をシェアする

TOP