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【取材レポート】SDGs未来都市・相模原市のサステナブルな取り組みを体験!①
~ごみの資源化・原料化~

サスアス編集部は、全国でも有数のSDGs先進都市として知られる神奈川県相模原市の「『SDGs未来都市 相模原』を体感するプレスツアー」に参加してきました。

今回から3回にわたりその模様をお届けいたします。相模原市の取り組みを通して、SDGsに関して自治体や企業・団体がどのように取り組んでいるのかを知ることができる内容となっていますので、相模原市にゆかりのある方も、そうでない方もぜひご一読ください。

第1回となる今回は、相模原市のSDGsへの取り組みに関する概要と、ごみ処理の現状を取り上げます。

【レポート内容(全3回)】
第1回:相模原市南清掃工場(今回)
 相模原市のSDGsへの取り組み概要、ごみの資源化・原料化
第2回:日本フードエコロジーセンター・さがみはらバイオガスパワー、火焔山餃子房
 食品ロスに対する最先端の取り組み
第3回:さがみこベリーガーデン
 太陽光発電を活用した未来の農業

相模原市のSDGs

相模原市は、神奈川県の北部に位置する政令指定都市です。都心から約1時間のアクセスでありながら、湖や清流、山々と豊かな自然に恵まれています。
また、2034年以降に開業するリニア中央新幹線の駅が設置されることでも知られています。

ツアー冒頭には本村賢太郎市長からご挨拶がありました。
「5年前に市長になって以来、SDGsに関してアクセルを踏んで取り組みを進めており、2020年には『SDGs未来都市』に選定、2023年には日経グローカルの『全国市区第3回SDGs先進度調査』で全国5位に評価いただきました。これからも『SDGsを学ぶなら相模原』と言っていただけるように取り組みを加速していきます」

推進体制
相模原市では市長のリーダーシップの下で、専管組織「みんなのSDGs推進課」を設置して市民や企業、団体とも連携しながら事業を推進しているそうです。

2020年9月には政令指定都市として初めて「気候非常事態宣言」を発しています。この宣言は、集中豪雨や猛暑など気候変動による日常生活への影響に対する危機感を共有し、災害等への備えや地球温暖化の抑制に向けた具体的な行動を促すというものです。

ちなみにこの宣言、世界的にはオーストラリアのデアビン市が初めて行ったものでその後世界中に波及していき、日本では2019年9月に長崎県壱岐市が宣言したのが初めてとなります。

宣言は自治体だけでなく国や大学等が発しているケースもあります。自分が住んでいる地域が宣言をしているのか見てみるのも、SDGsを自分ごととして考えるいいきっかけになるかもしれません。

普及啓発
市ではSDGsの認知度向上や情報共有を進めるため、特設サイト「SDGs one by one」を運営しています。SDGsについて楽しく学べるサイトになっていて、相模原市在住の方に限らず参考になります!

ほかにも、SNSやラジオ番組による情報発信、SDGsと関連する施設を巡るSDGsスタンプラリー、職員を派遣しての講演などさまざま取り組みを行っているそうです。

「相模原SDGs EXPO」と題するイベントも開催しており、トークショーなどのステージ、有識者による基調講演、パネルディスカッション、ブース出展など盛りだくさんの内容となっています。

企業等との連携
企業や団体、教育機関、行政等の連携を図るため「SDGsパートナー制度」の整備も行っています。登録すると専用のプラットフォームでの交流やマッチングなどの支援を受けることができるというものです。そうした連携事業に対しては補助金の交付も行われています。

また、「さがみはらSDGsビジネス認証制度」として、社会貢献や環境への配慮をしながら事業を進める企業等を認証する仕組みも用意し、PR支援やSDGs企業振興資金の優遇措置などのメリットを提供することで具体的な行動変容につなげています。

ごみの資源化・原料化

本ツアーで最初に訪れたのは、「相模原市南清掃工場」。いわゆるごみ処理施設で、2010年から稼働しています。煙突が見えますが、昔ながらのものとは異なりスタイリッシュなのが印象的です。

同工場の特長の一つは、ごみに含まれる「鉄」や「アルミ」を資源として回収するとともに、ごみを溶かして道路の舗装材料などに用いられる「スラグ」を作る、マテリアルリサイクルに取り組んでいることです。

さらに、焼却炉から金・銀の回収にも成功しています。2022年にそれまで蓄積した分も含め約3,700万円の収入につながったことが発表され、大きな話題となりました。

その後、銅やパラジウム(電子基板等に用いるレアメタル)の回収にも成功し、2023年度は約2,760万円分の収入につながったと言います。まさに「都市鉱山」。限られた資源を有効活用するための注目すべき取り組みと言えるでしょう。

ごみ処理の流れ
ごみ処理は、大まかに次のような工程で行われます。
①搬入したごみを計量し、ごみを溜めておく「ごみピット」に投入
②ごみを均一に燃やすためクレーンで撹拌
③高温で燃焼、スラグを生成

こうした処理過程で発生する熱エネルギーは発電に利用され、同施設の電力を賄うとともに、余剰電力は電力会社に供給しています。
また、この熱は温水プールなどにも活用され、サーマルリサイクルへの取り組みが行われています。
単にごみを燃やすだけでなく、エネルギーを循環させる取り組みが進められていることがうかがえます。

日本のごみ処理事情

日本におけるごみ処理の現状も確認しておきましょう。
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」を見ると、1人1日当たり1kg弱のごみを排出していることや、リサイクル率が約20%であることなどが分かります。

ごみ排出の状況(2022年度)
ごみ総排出量:4,034万トン(前年度4,095万トン)[1.5%減]
1人1日当たりのごみ排出量:880グラム(前年度890グラム)[1.1%減]
家庭系ごみ排出量:2,275万トン(前年度2,339万トン)[2.7%減]
1人1日当たりの家庭系ごみ排出量:496グラム(前年度508グラム)[2.4%減]

ごみ処理の状況(2022年度)
最終処分量:337万トン(前年度342万トン)[1.4%減]
減量処理率(焼却、破砕処理、資源化等):99.1%(前年度99.1%)
直接埋立率:0.9%(前年度0.9%)
総資源化量:791万トン(前年度816万トン)[3.1%減]
リサイクル率:19.6%(前年度19.9%)

ごみ焼却施設の状況
施設数:1,016施設(前年度1,027施設)[1.1%減]
処理能力:174,646トン/日(前年度175,715トン/日)
1施設当たりの処理能力:172トン/日(前年度171トン/日)
余熱利用を行う施設数:730施設(前年度729施設)
発電設備を有する施設数:404施設(前年度396施設)(全体の39.8%)


相模原市の施設を見て分かるように、ごみを処理する技術は向上しています。とはいえ、ごみの総量自体を減らしたり、再利用しやすいように分別したりすることも依然として大切です。実際、人々の意識が高まっているのも確かなようで、日本におけるごみ排出量のピークだった2000年度は約5,500トンですから、この20数年で1,500トン減っていることになります。

一方、日本におけるごみ処理費用は分別対応などに伴い年々増加しており、2022年度は2兆1519億円という膨大なコストがかかっています。一人当たりでは年1万7100円かかっていることになります。

引き続きごみを減らすために、一人ひとりができることを継続することが必要です。特に可燃ごみの半分を占める生ごみ対策が効果的で、「食べ残しをしない」「生ごみの水分を絞る」といった日々の行動の積み重ねが大切になります。
その他、「箸やコップをはじめ使い捨てのものを使わないようにする」「洗剤など詰め替え用パックを利用する」など、ごみを減らすように意識し行動を変えていきましょう!

ごみの埋立地はほとんど残っていない
なお、日本にはごみの最終処分場(埋立地)が1,557施設(2022年度末現在)ありますが、埋め立てが可能な容積には限界があります。残余容量は9,666万立方メートルで、あと約23年で満杯になるとされています(環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」)。

埋め立てられる廃棄物にはリユース、リサイクルができないゴムや金属、ガラス、陶磁器などいわゆる「燃やせないごみ」も含まれており、私たちが何気なく捨てた日用品が埋立地を圧迫している現実があります。

ごみ処理に目を向けよう

相模原市南清掃工場は平日8時30分~11時45分、13時~16時の間、自由に見学することができます(10人以上の団体は要予約)。
社会科見学のようで楽しいですし、ごみ処理の現場を体験することで、きっと今まで見えなかったものが見えるようになるはずです。
近くにお住いの方はぜひ一度訪れてみてください。

【相模原市南清掃工場】
所在地:〒252-0328 南区麻溝台1524-1(地図はこちら
電話番号:042-748-1133
HP:相模原市HP内「施設案内 南清掃工場」

遠方の方は自分が住んでいる地域のごみ処理施設に足を運んでみるのもおすすめです。
ぜひ私たちの生活と切っても切り離せない「ごみの現実」について知っておきましょう!

レポート第2回の記事はこちら

Sus&Us編集部

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