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高騰が続くガソリン価格 高値の裏にあるカーボンニュートラルの影響とは?

ガソリン価格の水準が過去最高値に迫る

2023年8月、ガソリンの価格高騰が連日にわたってニュースを騒がせています。経済産業省は、8月14日時点のレギュラーガソリン全国平均小売価格について、前週より1円60銭高い、181円90銭/1リットルだったことを発表。これで値上がりは13週連続となり、お盆の帰省や夏休みの家族旅行に水を差す形となりました。

181円台というガソリン料金は、約15年ぶりの高値であり、2008年8月に記録された185円10銭の最高値に肉薄する勢いです。しかも、経産省はこの金額を踏まえたうえで、補助金なしの場合では来週のガソリン価格が195円70銭に達すると予測しており、今夏のガソリンが如何に高いかが伺える形となりました。
さらにガソリン補助金の補助率は今年の6月から引き下げが始まっており、9月末には終了します。ここに円安なども影響してガソリン価格は引き続き上昇していく見通しとなるため、普段から自動車を使う方はもちろん、それ以外の方にも輸送費の増大による物価高騰がのしかかると予想されます。

この未曾有の高騰の原因は何なのか、どうしてこんなにガソリンが高くなってしまったのか。ニュースを見るたび、暗い気持ちになる方は多いかと思います。実際、今回のガソリン価格高騰には円安やコロナ禍明けの需要増大、先述した補助金の引き下げなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っており、「ここさえ収まれば…」と原因を見据え、希望を抱くことが難しくなっています。
そうした中、高騰の一大原因となっているのが、ガソリンや灯油の元となる原油価格そのものの高騰です。そもそも原油の価格が高いため、補助金等でカバーしきれずにいるのですから当然のことと言えるのですが、では原油価格の高騰は何故起こっているのでしょうか。
その理由としては、昨年から始まったロシアのウクライナ侵攻、及びそれに伴う経済制裁によるロシア産石油の供給減少が挙げられるでしょう。これによって原油や天然ガスの価格が高騰し、電気料金が値上がりしたことは記憶に新しいでしょう。
ただ、実は原油価格はウクライナ侵攻が始まるよりも前、2020年以降から常に上昇傾向にあります。そしてそこには、カーボンニュートラル(脱炭素)の余波が少なからず影響しているという見方があるのです。

カーボンニュートラルによる原油の座礁資産化に産油国が危機感を抱く

2023 年6月時点、日本の原油輸入国トップ3はサウジアラビア(451万キロリットル)、アラブ首長国連邦(407万キロリットル)、クウェート(110万キロリットル)となっています。これらの国々はいずれも「OPEC(石油輸出機構)」の加盟国であり、ここにロシア等非加盟主要産油国を加えたものが、いわゆる「OPECプラス」です。
実は今年の6月、OPECプラスはウィーンでの閣僚級会合にて原油の協調減産を2024年末まで延長することを決定しました。元々この協調減産は2023年末までを予定しており、そこから1年延長。さらにサウジアラビアは7月に追加で日量100万バレルの自主減産を行うことを発表したほか、ロシアなども自主減産を宣言しています。これにより、減産の規模は最大で466万バレルと、世界の需要5%ほどに至ることが判明しました。
石油が減産されれば、その分だけ1バレル当たりの価格が高くなります。実際、6月5日の減産発表の時点で原油価格の高止まりは心配された問題でした。

では、何故高騰すると分かって石油を減産したのか、その理由の一端がカーボンニュートラルにあるのです。というのも、カーボンニュートラルの流れにおいて、石油、つまり化石燃料はその依存度を下げていく必要があります。石油や石炭といった化石燃料は当然ながら、地球温暖化の一大原因です。
こうした化石燃料からCO₂(二酸化炭素)を出さないグリーンエネルギーへの転換、それ自体は非常に素晴らしいものといえるでしょう。ただこれは、当の産油国からすれば自国の大事な石油資源が座礁資産化(無価値化)することを意味します。また、通常であればOPECプラスの価格支配力を下げるために米国のシェールオイルが増産に踏み切り、価格調整役を担いますが、現状はその増産も遅延傾向にあります。ここに、コロナによる収益低減を取り戻そうとする動きやカーボンニュートラル下での供給過多による価格低下への懸念も加わったことで、OPECプラスが原油価格を下げないようにする状況が整ったのです。

まとめ

いずれにせよ、化石燃料をめぐる状況はカーボンニュートラルの推進と反比例するように、不安定になっていくことが予想されます。これは国際レベルで共通の問題ではありますが、エネルギーに関する外部依存度が高い日本にとってはより大きな問題となるでしょう。
かといって、ガソリンに頼らないEV(電気自動車)においても、電気を作るためのエネルギー源が石油や天然ガスに依存している以上、原油価格の影響から逃れることは難しいといえます。そうなると、現状では不安定ながら、自給可能なエネルギー源である再生可能エネルギーの比率を高めながら、エネルギーをマネジメントしていくことが今後の戦略としては有用だと言えるでしょう。
カーボンニュートラルに伴う時代の転換が速く収束し、いかなるエネルギー源であろうとも、家計の圧迫が少しでも楽になることを祈らずにはいられません。

Sus&Us編集部

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