記事・コラムTOPICS

海洋ごみ問題は今どうなっている?
―プラスチックごみの深刻化―

20世紀に入り、世界的な産業化と機械工業化が進むことで様々な物が大量生産、大量消費される時代に入りました。それはつまり、より多くの人にモノが供給される時代になったということでもありますが、その影には環境への負の影響がありました。

環境問題の歴史を見ていくと、誰もが学校の教科書で目にしたであろう足尾銅山鉱毒問題から工業廃水が原因で引き起こされた人体への悪影響の数々。さらには大気汚染や気候変動問題へと繋がっていきました。それらは時代が進むと共に対策をうちたてていきましたが完全な解決には至っていないものもあります。

現在問題とされている環境問題、特に、海に囲まれた島で暮らす私たちの身近な問題として、海洋ごみ問題があります。ウミガメが、ビニール袋を誤って食べてしまい窒息してしまったというニュースは見たことがあるのではないでしょうか?

今回は、持続可能な開発目標(SDGs)GOAL14『海の豊かさを守ろう』とも関わりのある海洋ごみ問題の現状について解説していきます。

海洋ごみ問題とは

海洋ごみとは、私たちが生活をしていく上で発生するペットボトルやビニール袋、包装袋、ラベル、プラスチック容器、釣り糸などのプラスチックごみが海に流れ着いたもの。また、海に捨てられた家電製品や漁網、壊れた車やその部品などの不法投棄物によって海洋が汚染されている問題のことです。

海洋汚染の原因には生活排水や工業廃水、海上での重油の流出などもありますが、一番の問題とされているのは海洋ごみであり、その中でも特に大きな問題となっているのがプラスチックごみとされています。

海洋ごみ問題の現状

海洋ごみは年々増加している傾向にあり、現在の世界全体の年間排出量は800万トンで、海に漂っているごみの量は1億5000万トンと推測されています。身近なもので例えると、重さ15トンのバス約1000万台分にあたります。想像してみてください、バス1000万台が海に浮かんでいる光景を。もはや大きな島と言えるでしょう。

海洋ごみがこのまま増え続けると、2050年には魚よりもごみの量が上回るとされており、世界規模で解決しないといけない深刻な問題と化しています。

特に深刻な問題とされているプラスチック製品のほとんどは、数百年単位で自然に分解されることが無いため、海洋を漂い続けることで生態系破壊に繋がります。

プラッチックごみが引き起こす問題

プラスチックごみにより引き起こされる大きな問題としては以下のものがあります。

・海洋生物・海鳥が誤飲することで窒息してしまったり、胃に溜まり続けたりしてしまう問題。

・海に捨てられた釣り糸や漁網に、海洋生物がひっかかることで身動きが取れなくなり、自力では脱出できなくなってしまう『ゴーストネット』、『ゴーストフィッシング』問題

・特に深刻な問題とされている『マイクロプラスチック』問題

深刻なマイクロプラスチック問題

最も大きな問題とされているマイクロプラスチックとは、5mm以下の小さなプラスチック粒子のことで、歯磨き粉や洗濯用洗剤に含まれているモノもあります。また、プラスチック由来の合成繊維で作られた衣類を洗濯した時にも生活排水として排出されてしまうのです。大きなプラスチックであっても、外的要因による劣化によりプラスチック片となり、さらに細かく分解されることでマイクロプラスチックとなります。

私たちがマイクロプラスチックを取り込んだだけではただちに影響はありませんが、魚が取りこんでしまうと消化器官を傷つけてしまうという懸念があります。また、有害物質の運び屋としての側面もあり、マイクロプラスチックに汚染物質が吸着し、それを魚が摂取することで生物濃縮されていき、生物濃縮された魚介類を人間が摂取することで、健康に悪影響を及ぼすという問題もあるのです。
マイクロプラスチックは微細な粒となっているため回収することが困難という点も深刻な問題となります。

マイクロプラスチックの回収は困難と述べましたが、炭素を吸収、固定化することで、カーボンニュートラルを実現するために注目されている『ブルーカーボン』と称される海藻や藻場には、マイクロプラスチックの吸着・除去能力も期待されているのです。

私たちにできること

世界的にも脱プラスチックの流れがあり、日本でも、包装袋やラベルに使われているプラスチック削減や、『生物解性プラスチック』、『バイオマスプラスチック』といった環境負荷の少ないプラスチックの利用といった取り組みが行われています。

もちろん、私たち一人ひとりにも出来ることはあります。例えば、マイバッグやマイボトルを利用することで、ビニール袋やペットボトルの消費を減らすこと。消耗品を買うときは再生可能資源由来の素材の商品を積極的に選択。他にも、企業や団体が行っているごみ拾いのボランティア活動に参加することでも海洋ごみを減らすことに繋がるでしょう。

青い海に囲まれた日本という国に生まれた私たちだからこそ、豊かな青い海を維持するために、海洋ごみを減らす取り組みをしてみませんか?

Sus&Us編集部

この記事をシェアする

TOP