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航空業界を脱炭素に導く
持続可能な燃料SAFとは?

"空の脱炭素"の鍵を握る、持続可能な燃料

 自動車業界でEV(電気自動車)の普及が進む一方、航空業界における脱炭素は、SAFがその鍵を握っていると言えます。SAFとは「Sustainable Aviation Fuel」の略で、持続可能な航空燃料のこと。バイオマスを原料としており、二酸化炭素(CO₂)排出量を減らせる点から”空の脱炭素”の切り札と目されています。その性能は、航空機を運航する際の燃料をSAFにすることで、CO₂排出量をジェット燃料比で約8割も削減可能だとされているほどです。
 自動車やバイクと異なり電動化が難しい航空機では、燃料の選定や運用がCO₂の排出削減に直結します。しかもSAFは空港などで給油する際、既存の設備をそのまま活用できるのも大きなポイント。航空業界における脱炭素の鍵とされるのは、こうした背景があるためです。

2030年までに10%をSAFに置き換える目標

 2022年9月、国土交通省は航空分野の脱炭素化に向けた、具体的な施策の工程表をまとめました(国土交通省HP )。そこでは、2030年までに国内航空会社が扱うジェット燃料のうち、全体使用量の10%をSAFに置き換える目標を盛り込んでいます。一見、たった10%と思えるこの目標ですが、実際はかなり高いハードルです。
 まず、世界のSAF利用率は航空燃料全体の1%以下。コストも従来の化石燃料と比較して非常に高価です。参考までに2022年6月の報道では、ユーグレナ社(参考記事 )の「サステオ」を20%混合した軽油が、1リットル当たり300円で販売されると報じられました。国内で生産するにせよ、輸入に頼るにせよ、10%の目標達成までには非常に高いハードルがあるのです。

 では、何故SAFは高価で供給量が増えないのか。理由の一つとして、SAFの原料が多岐にわたることが挙げられます。例えば、先述したサステオは、ミドリムシから抽出した油脂や廃油などを原料としていますが、SAF全体でみると、その他さまざまなものが原料として研究されているのです。代表的なものとしては、使用済み食用油や木くず、プラスチックを含む産業廃棄物などがあります。
 このように聞くと、さまざまな廃棄物を転用してカーボンニュートラルに貢献できる夢のような取り組みと思えるかもしれません。しかし、こと大量生産に関しては話が別です。材料が多岐にわたることで大規模な生産が難しくなり、原料調達も不安定になりがちです。効率化に向けた研究も、企業やグループごとに異なる原料を対象としていては中々進みません。
 一度に大量に作れなければ、価格は安くなりませんし、そうなると普及も進みません。SAFの供給が増えないのにはこういった背景があるのです。

今後の展望は

 現在、SAFは欧州を中心に生産されており、輸入できる量も限定的です。国内で安定供給するために、官民の協力体制で輸入SAFのサプライチェーン(供給網)を構築するほか、JALはアメリカの企業に出資して、アメリカの空港でSAFを供給できる体制作りを進めるなど、さまざまな取り組みが進められています。
 とはいえ、やはり期待したいのは国産SAFの製造でしょう。残念ながら、国産SAFの製造が本格化するには、まだまだ時間がかかりそうなのが現状ですが、そこに向けた取り組みは日々報道されています。まずはSAFを用いた事例を目に留めて、少しずつ、けれど確実に本格化へと進んでいく様子に期待を募らせてみてはいかがでしょうか(参考記事 )。

Sus&Us編集部

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